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活断層の危険性 適切評価なく原発再稼働容認できぬと専門家

 原発周辺で見過ごされている活断層をいくつも指摘し、「評価をやり直すべき」と訴えてきた渡辺満久・東洋大学教授(変動地形学)。そして今、全国で唯一運転が再開された大飯原発の敷地内に、活断層の存在が疑われている。6月末に現地を視察した渡辺教授が、新たに判明した重大な事実を報告する。

 * * *
 原発の危険性ばかり訴えているため誤解されがちだが、私は再稼働に絶対反対ではない。代替エネルギーの少ない日本の現状を慮れば、原発の即全廃は非現実的だからだ。

 しかし、活断層の専門家としては、その危険性が適切に評価されない限り、再稼働を容認することはできない。それは、既に稼働した大飯原発も例外ではない。大飯の敷地内には1、2号機と3、4号機の間をF-6という破砕帯(断層)が南北に走っていることが判明しているが、これは後述する理由から活断層の疑いがある。

 しかも、6月27日に行なった現地視察では、新事実が判明した。施設の耐震設計上、最も重要度が高い「Sクラス」に位置づけられ、事故発生時に3、4号機の原子炉を冷やすための水を運ぶ非常用取水路がF-6断層を横断していたのだ。

 いくら耐震構造を強化しても、地盤そのものがずれると建築物は破壊されてしまう。F-6断層が動けば、これを横切る直径数mの取水管が壊れて3、4号機の原子炉が冷却できず、原発事故がより深刻化する懸念がある。

 この事実がわかってピンときた話がある。2年ほど前、原子力関連施設の耐震安全審査の手引きを作成する会議で、活断層の専門家である広島大学の中田高名誉教授と名古屋大学の鈴木康弘教授が「活断層が疑われる断層の上に重要構造物を建てない」という主旨の一文を加えることを提案すると、他の多くの委員は「活断層の真上にSクラスの建物・構築物を設置することは想定していない」として、強硬に反対した。察するに、彼らは今回のような大問題の発覚を恐れていたのだろう。

 実は今回、F-6断層が活断層である疑いが明らかになったのは関西電力作成の資料を見てのことだった。1985年の3、4号機の設置許可申請に際し、関電はF-6断層のトレンチ(掘削)調査を行ない、坑内の南側断面図を示して「活断層ではない」と判断。原子力安全・保安院も2010年の耐震安全性調査(バックチェック)で関電の評価結果を「妥当」とした。

 ところが、ここに陥穽があった。実は、1985年の調査では南側だけでなく、同じ坑内の北側断面図も存在したが、関電は今回の再稼働をめぐる保安院の安全確認調査に南側の断面図のみを提出し、北側断面図をなぜか出していなかったのである。

 今年5月末、市民団体が発掘した1985年当時の資料で北側断面図を見た私は心底、驚愕した。破砕帯を境にして地層の壁面が50cmほど隆起し、その起伏に沿って砂利層など新しい地層が堆積していたのだ。一見して「地層のずれ」が読み取れる図だった。

 さらに、岩盤がずれて擦れる際に生じる「断層粘土」が破砕帯との隙間に存在する様子も描かれていた。柔らかい断層粘土は地層が比較的最近動いた証しとなる。北側断面図が示すのは典型的な活断層の兆候だったのだ。

 不思議なことに、関電が提出した南側の断面図には「地層のずれ」や「断層粘土」は一切見られなかった。同じF-6のはずが、北と南でなぜ大きく食い違うのか。

 この疑問は、もう一度掘削調査をして地層断面を確認すれば判明する。この断面図が作成された地点の上には建物が建っているが、私は先の現地視察で、敷地内に掘削可能な場所が3地点あることを確認した。関電側は「物資搬入車両の通り道のため工事は困難」などと言うが、掘削調査は数日~1週間で完了するので一時的に車両用の別ルートを設けるなど対応方法はあるはずである。今からでも、掘削調査をすべきだ。

※SAPIO2012年8月1・8日号

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