兵庫県尼崎市の民家で3人の遺体が見つかり、他にも多数の行方不明者が出ている事件。その中心人物とされる角田美代子被告(64才)が逮捕時に暮らしていたのは、阪神電鉄・杭瀬駅から徒歩15分ほどのところにある豪奢なマンションだった。
「あのマンションはできてもう12年は経つねんけど、せやかてこの辺ではいちばん立派なマンションやで」(近所の住民)
角田被告が住んでいた最上階8階の角部屋は、周囲の目を遮るかのように、一面が木製のフェンスで覆われていた。ここにきて、このマンション内でも殺人が行われていたとの証言が、角田被告の関係者から飛び出している。
「角田の家に入ったのは、2年くらい前の秋口ですわ」
そう話すのは、マンションからほど近いところにあるたこ焼き店の店主・広瀬哲也さん(40才)。角田被告は戸籍上の息子とその妻・瑠衣被告(27才)ら家族を引き連れて、よく広瀬さんの店を訪れたという。
「角田は腹がボンと出とって、だらしない体形してましたわ。いつも身体のラインが隠れるような黒っぽいワンピース姿でしたね。前歯も1、2本抜けているのか、欠けてるのか。ワンレンで、肩よりも長いくらいやね」(以下「」内は広瀬さん)
毎週やってきては、一度に4~6パック(1000~2000円程度)を気前よく買っていった角田被告に、広瀬さんはすっかり心を許していった。
そんなある日、店を訪れた角田被告は、広瀬さんに「にいちゃん、ここでこんなことがしたいんと違うやろ」と神妙な面持ちで話しかけてきた。今にして思えば、それが角田被告の誘いの手口だったのかもしれない。そうして、広瀬さんは角田被告の自宅でもある、“殺戮の部屋”を訪れることになった。
「マンションの1階がオートロックになってるので、インターホンを押したら、瑠衣とごっつい男2人が1階まで迎えに来はったんですよ」
瑠衣被告とふたりの男に促されるように8階へと上がり、部屋の入り口まで通された広瀬さん。
「玄関を開けると、両面鏡張りの廊下で、眩しいくらいピカピカやったんですよ。リビングは、ひとつ部屋をつぶして広く使ってはりました。赤と黒を基調にした高そうなアンティーク家具が並んでいたんですわ。
ガラス張りのショーケースの中には、高そうな洋酒やバカラのグラス、クリスタルの車の置物なんかがきれいに飾られてあって、じっと見てたら、角田から“そこにあるだけでも2億円くらいするから気ぃつけてな”って言われましたわ。壁もすごかったで。ネオン管の電飾までつけられていて、とにかくフツーの家とは思えん部屋でした」
あらかじめ、角田被告に好物を聞かれていた広瀬さん。リビング中央のテーブルには寿司や刺身の盛り合わせが置かれた皿が、テーブルに置ききれないほど並べられていた。ソファの真ん中にどっしり座っていた角田被告は、圧倒されっぱなしの広瀬さんをなめるように見て、「やっと来てくれたなあ」とうれしそうに言ったという。
「それで、食事をすることになったんです。でも、食べてるのはぼくだけ。瑠衣は床に正座し、ふたりの男は用心棒のように不気味に立っていた。角田は“ビール持ってきてやぁ~”とか、“サーモンはないんか”と瑠衣をあごで使っていましたね。
瑠衣は角田に何か言われるたびにびくっとして、居酒屋の店員よりもずっときびきびと動き回っていました。ほんで角田は全然動かん。微動だにせんのです。ただモナリザみたいに腕を組んで、そのまま動かざることモナリザのごとしでしたわ。ずっと薄笑いを浮かべてましたわ」
広瀬さんは角田被告の部屋や彼女を取り巻く人間関係を不気味に思い、なんとかその場を取りつくろい、早々にマンションを後にしたという。
※女性セブン2012年11月8日号