国内

自民へシフト 安倍氏籠絡で財務省狙う“天下りの頂点”復活

 消費税率5%引き上げで得られる税収は約13.5兆円だが、官僚は早くも利権拡大に走り回っている。ジャーナリストの武冨薫氏がレポートする。

 * * *
 霞が関は焼け太る一方、野田政権に見切りをつけ、自民党政権へのシフトを強める。長年、政権をともにしてきた自民党のほうが蟻塚をつくりやすいからである。

 財務省は自民党総裁選中から、安倍政権時代に首相秘書官を務めた田中一穂・主税局長が安倍氏にぴったり張りつき、安倍執行部の実力者である菅義偉・幹事長代行や甘利明・政調会長のもとにも連日のように各省幹部が出向いて“新政権の政策”の情報収集に動いている。元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授はこう見る。

「安倍さんは総裁選で『デフレ脱却しなければ消費税を上げるのに反対』と表明したし、周囲には『増税より経済成長を優先すべき』という経済政策を主張する議員が多い。増税路線を撤回しないよう十分に手を回している」

 財務省の狙いはそれだけにはとどまらない。日銀総裁人事である。

 現在の白川方明・総裁は来年4月に任期満了を迎える。自民党政権末期の2008年、時の福田政権が提示した元財務次官の武藤敏郎・副総裁らの総裁人事案を野党時代の民主党は「財務省の天下りは認めない」と次々に否決。混乱の末に白川氏が総裁に就任した経緯があるだけに、今度こそ大物OBの武藤氏を日銀総裁にするのが財務省の悲願だ。

 財務省の中堅官僚は、「来年4月に野田政権が続いていようが安倍政権になろうが、国会同意人事であることを考えると自民党がNOと言えば武藤さんの目はなくなる。安倍さんにうんと言わせる信頼関係を築くのがわが省の最大のミッション」と言ってはばからない。

 その安倍氏は10月11日の記者会見で、「思い切った金融緩和を行なうべきで、(白川総裁の)今までの対応では不十分だ」と白川再任の可能性を否定するなど、総裁交代をにおわせた。財務省にとっては都合のいい展開だが、「デフレ脱却を重視する安倍さんは武藤総裁就任には懐疑的」(安倍側近)という見方もある。

 日銀人事の先には、東証と大証が統合されて設立される「日本取引所」のトップ人事や日本政策投資銀行の社長人事など、財務省が奪回を目指すポストの交代が控える。日銀総裁という、いわば蟻塚の頂点を選ぶ人事で財務官僚のシナリオを認めれば、役人天国の完全復活が決定的になる。

※SAPIO2012年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン