端正な顔立ちと華麗なプレーで「ラグビー界の至宝」といわれる、SBWことソニー・ビル・ウィリアムズ(27)。彼見たさに、パナソニックの試合会場では500人以上のファンが出待ちするなど、日本でもすでに絶大な人気だ。今季のトップリーグの「台風の目」になっているSBWが、本誌のインタビューに応じた。
「パナソニックの担当者の方が、わずかな話し合いの時間のために、はるばるニュージーランドまで来てくれた。その熱意に心を打たれ、日本に来ることを決めました」
日本の土を踏んだ理由について、SBWはこう語る。
昨年のW杯ではオールブラックスの一員として活躍し、母国を24年ぶりの優勝に導いた。彼の持ち味は、執拗なタックルを受けながらも、長い腕を伸ばしてパスを繋ぐ「オフロードパス」である。
日本のファンもこの妙技を楽しみにしているが、と訊ねると、こんな答えが返ってきた。
「ファンもマスコミの皆さんもオフロードパスを見たいと思っていることは知っています。もちろんそれには応えていきたいですが、私にとって重要なのは、何よりもいかにゲインラインを突破する(ボールを前進させる)のかということです。パスするか、自分で持ち込むかを考えるなかで、相手に捕まったときだけオフロードパスが選択肢となりますが、それもサポートしてくれる仲間のおかげで、初めて成立するものですから」
決してスタンドプレーに走らず、チーム第一を強調するSBW。実際、彼はBK陣の要になるだけではなく、相手チームの警戒を引き付けて味方に外から攻め込ませるなど、SBWの加入によりパナソニックの戦略は豊富になった。
日本のラグビーについてはどう感じているのか。
「試合のテンポがスピーディーですね。それに、パス捌きなどの技術や突破力で、能力の高い選手がたくさんいると感じました。日本の選手への助言やアドバイスですか? まずはメンタル面を大切にして欲しい。新たな挑戦を無理だと思っても、自分を信じることは非常に大切です」
実はSBWはプロボクサーという顔も持つ。「ボクシングは趣味だよ(笑い)」と笑わせたが、その“趣味”で東洋太平洋ヘビー級3位にまで上り詰めているから驚きだ。計り知れない身体能力の高さを感じさせる。
「オフシーズンにボクシングの練習を取り入れたら体力がかなり向上し、良いプレーができるようになったんです。メインはあくまでラグビー。ただボクシングも、やるからには毎試合、全力で相手をKOするつもりですけどね」
残念ながら、来季はオーストラリアリーグ(13人制)に復帰する予定で、SBWを国内で見ることができるのは今季限りになる可能性が高い。いま見ておかないと、確実に損をします。
※週刊ポスト2012年12月7日号