国際情報

米原潜の巡航ミサイル攻撃で中国本土ミサイル基地は全滅説

 仮に八重山諸島、沖縄本島に向けたミサイル発射など、暴走する中国に対して、同盟国・アメリカが動けば、戦局は大転換する。

 いくら自国の国益にならないといっても、中国の挑発行為をアメリカがいつまでも拱手傍観(きょうしゅぼうかん)するとは考えにくい。10月に米第7艦隊は空母2隻をインド洋のアンダマン海に展開し、統合軍事演習を行なった。

 在日米軍の動向に詳しい元航空自衛隊南西航空混成団司令の佐藤守氏は、「米海軍の空母2隻が米本土から遠く離れた場所で統合演習を行なうのは極めて異例。明らかに日本への挑発を繰り返す中国の暴走を牽制する意図があった」と指摘する。

 また3年ぶりに相模湾沖で行なわれた自衛隊の観艦式では、米イージス艦「シャイロー」に第7艦隊司令官のスコット・スイフト中将が乗艦。護衛艦「くらま」で観艦する野田佳彦首相に敬礼する場面に注目が集まった。

「これも『日本に攻めてきたら承知しないぞ』という中国に対するシグナルだ。万が一、中国がミサイル攻撃でも仕掛けて来るようなことがあれば在日米軍は一気に動くだろう」(前出・佐藤氏)

 中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは、東シナ海の大陸棚に大量の石油が埋蔵されている可能性が指摘された1971年以降のことだ。だが今、彼らの狙いは資源ではなく軍事面にあるという。

 帝京大学教授の志方俊之氏の解説。

「およそ地上にある核弾道ミサイルの基地は常に宇宙から見られて正確に特定されており、有事にはほとんどが破壊されてしまうが、潜水艦発射弾道ミサイルは現在位置の特定が困難になる。中国が南西諸島以東に進出して東シナ海を聖域化すれば、核ミサイルを搭載した潜水艦が自由に動き回ることができ、アメリカに対する最小限の核抑止力が担保できる。アメリカはそれを無視することはできない」

 つまり、沖縄周辺に中国が触手を伸ばせば、同盟国アメリカはついに動き出す可能性が高い。

 中国がミサイル攻撃を始めれば、米軍による報復を覚悟しなければならないと『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力』(小学館刊)著者で元統幕学校副校長の川村純彦氏も断言する。米軍の攻撃は原子力潜水艦から発射されるミサイル攻撃から始まると予測する。

「米海軍はオハイオ級戦略ミサイル原潜を改造した特殊な潜水艦を4隻保有している。巡航ミサイルを発射でき、特殊部隊母艦にもなる。これらの原潜はそれぞれ154発の巡航ミサイルを搭載しており、その射程距離は1500km以上もある。そのため沖縄列島線の外側からでも中国内陸部まで攻撃可能である。東シナ海に侵入する必要もないので、中国海軍に妨害される可能性も非常に少ない」

 このようなアメリカ軍の報復に対抗する術は、今の中国側には全くない。

「アメリカ軍の巡航ミサイルは地面すれすれに飛び、目標を正確に攻撃する。中国側がそれを探知して迎撃できるとは考えにくい。日本を攻撃するためのミサイルが配備されている瀋陽、湖南、晋北、河北などの基地は全て破壊されるだろう」(川村氏)

 ミサイル基地が破壊されれば、中国は手も足も出ない。残された一手は核兵器しかなくなる。中国が自暴自棄になって、核で日米を脅す可能性が全くないとは言えないが、可能性は非常に低いだろう。ここで勝敗が決すると考えるのが妥当だ。

 ただし、中国人民解放軍の動向に詳しい『月刊中国』主幹でジャーナリストの鳴霞氏は、こう警鐘を鳴らす。

「人民解放軍の中には『日本やアメリカと戦争しても勝てる』と思い込んでいる幹部が少なくない。尖閣略奪や沖縄侵攻が彼らの甘い予想と違って大惨敗しても、軍の強硬派が一掃されるとは限らない。逆に本気になって軍備増強に走りかねない。中国に対して甘い考えは捨てた方がいい」

 平時でもまともな付き合いが難しい国だけに、いったん戦火を交えてしまうと、日本は一瞬たりとも警戒を解けない状態が続くことを覚悟しなければならない。

※SAPIO2012年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン