国際情報

ユーロでギリシャ、フィンランド離脱シミュレーションの概要

 2013年の世界経済を見るうえで最も重要なポイントとなるのは、やはりユーロだ。経営コンサルタントの大前研一氏が今後のユーロの行方について解説する。

 * * *
 いまユーロ圏では「2つのシミュレーション」が進んでいる。1つは、ギリシャをユーロから離脱させる方法はあるのか、離脱させたら何が起きるのか、ということだ。

 ギリシャを離脱させると、ギリシャ政府は旧通貨ドラクマを再び発行しなければならなくなる。しかし、ギリシャ人も含めてドラクマを信用する人は少ないから、ドラクマには需要がない。

 ギリシャ人もユーロにしがみつき、ドラクマをユーロに替えようとするだろう。したがって、仮にドラクマの発行初日は1ドラクマ=1ユーロだったとしても、すぐに3ドラクマ=1ユーロ、5ドラクマ=1ユーロとドラクマ安が急進し、ギリシャはハイパーインフレになってしまう。

 結果はどうなるか。ギリシャ政府の国民に対する債務はハイパーインフレで一部が帳消しになるかもしれないが、ユーロ建ての対外債務はそのまま残って返済が苦しくなる。ギリシャ国民の生活は成り立たなくなり、どのみちギリシャは国家破綻に追い込まれ、デフォルト(債務不履行)を宣言するしかなくなるだろう。

 といっても、その影響はもはや予想の範囲内だ。ドイツなどがギリシャ向け債権を踏み倒されるだけの話であり、ギリシャが追加の救済資金をねだることもなくなる。ギリシャは切り捨てられれば地獄を味わうことになるが、それを見ればポルトガルなど他の財政危機国が、もう少し努力するようになるだろう。

 もう1つのシミュレーションは、フィンランドの「ユーロ離脱プラン」だ。ギリシャとは正反対に、トリプルA格付けを持つ“優等生”フィンランドでは、ユーロと一緒に沈むのはご免だという意見が強まり、EU加盟国でも通貨がユーロではないスウェーデンやイギリスの財政の自由度を羨む状況になっている。

 そこでフィンランドは、ユーロ離脱の方法として「ダブル通貨」の研究を始めた。これはユーロも利用したまま、旧通貨のマルッカも発行するという方法だ。たとえば、最初はマルッカ10%、ユーロ90%の割合で発行する。

 両者の信用が同じであれば為替レートは1対1になる。だが、ユーロ圏には財政危機国家が多いから、少しずつマルッカのほうが強くなってくる。それに伴いマルッカの割合を20%、30%と年々増やしていけば、ユーロが崩壊しそうな時には100%マルッカにしてスムーズにユーロ離脱ができるのではないか、と“図上演習”を行なっているのだ。

 ただし知っておかなければならないのは、仮にユーロから離脱して独自に金融政策、為替政策をとろうとしても、やれることは限られているということだ。今や世界はボーダレスな「連結経済」、言い換えれば「相互依存経済」になった。

 現在の市場メカニズムでは、為替レートは瞬時かつ自然に調整され、マネーは国を越えて飛び交うため、個々の国家が通貨の供給量を増やしたりしても、その効果は薄くなってしまう。大量供給したマネーが海外に流出し、国内にはとどまらなかったアメリカの「ドルキャリー」の例はその典型だ。

※SAPIO2013年1月号

トピックス

年越しはイスタンブールで過ごした渚さん(Instagramより)
「生きてみるのも悪くない、とほんの少し思えた」 渡邊渚さんが綴る「年越しを過ごしたイスタンブールの旅」
NEWSポストセブン
総選挙をきっかけに政界再編が大きく進むか(時事通信フォト)
《解散総選挙・政界大再編の胎動》自民も立憲も国民も分裂か “高市首相を中心とした急進保守勢力”と“自民党の穏健保守を含む中道・リベラル勢力”に大きく分かれていく流れ
週刊ポスト
再選を果たした小川晶氏(時事通信フォト)
ラブホ密会辞任の小川晶氏、前橋市長選に再選 オバ記者が気になったのは“やたら支持者とハグしていたこと”「地方の年配者は“オレに抱きついてきた”と勘違いしないかしら」
女性セブン
Netflixドラマ『地獄に堕ちるわよ』にて細木数子さん役を演じる戸田恵梨香(時事通信フォト)
《出産から約3年》女優・戸田恵梨香の本格復帰が夫婦にとって“絶妙なタイミング”だった理由…夫・松坂桃李は「大河クランクイン」を控えて
NEWSポストセブン
高市早苗・首相と政策が近い保守政党が自民党の“反高市”候補に刺客を立てる可能性も(時事通信フォト)
《政界再編のきっかけとなる総選挙》保守政党が自民党内の“反高市”候補に刺客 高市首相を中心に維新、参政、日本保守党などが新たな保守勢力結集に向かう動き
週刊ポスト
月曜夜に放送されているフジテレビ系『ヤンドク!』(インスタグラムより)
《元ヤンキーの女性医師も実在!?》『ヤンドク』『夫に間違いありません』『パンチドランク・ウーマン』、テレビ局が“実話ベースのオリジナル”を制作する事情 
NEWSポストセブン
宮崎あおいと岡田准一の円満な夫婦仲(時事通信)
《女優・宮崎あおいと4児の子育て》岡田准一「週6ジム通い」の柔術ライフを可能にする“夫婦円満”の秘訣
NEWSポストセブン
佐藤輝明とはいえ“主力”で起用されるとは限らない
《WBC侍ジャパン》阪神・佐藤輝明の不安要素 控え起用が濃厚で、前回大会の山川穂高や牧原大成と重なる立ち位置 憧れの大谷翔平から“どんな影響を受けるのか”も重要に
週刊ポスト
中国のインフルエンサーであるチョウ・ユエン(46)(SNSより、現在は削除済み)
「カラダでX字を描くの」 “性教育の達人”中国美熟女インフルエンサーが5億円超を稼いだ“過激セミナー”の内容とは《性産業を取り巻く現地の厳しい環境》
NEWSポストセブン
ガールズバー店長の鈴木麻央耶容疑者(39)とその右腕、田野和彩容疑者(21)
【写真入手】「1週間おなじ服で、風呂にも入らせずに…」店員にGPS持たせ売春、性的暴行も…ガルバ店長・鈴木麻央耶容疑者(39)の「“裸の王さま”ぶり」
NEWSポストセブン
フリースタイルスキー界のスター、アイリーン・グー選手(時事通信フォト)
《腹筋ビキニ写真が“完璧すぎる”と評判》年収35億円の中国美人アスリート(22)、“キス疑惑密着動画”で〈二面性がある〉と批判殺到した背景【ミラノ冬季五輪迫る】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市「改憲」爆弾と「石破茂中道入り」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市「改憲」爆弾と「石破茂中道入り」ほか
NEWSポストセブン