契約者数の激減、顧客満足度で首位転落……など苦境に立たされているNTTドコモが、巻き返しに転じようと必死だ。だが、社内からは「まずは企業風土から変えるべき」との声も聞こえる。
「無線は邪道だ」
NTT本体では、永く移動通信部門は日陰の存在であり、「人事では島流しの部署と言われた」(元ドコモ役員)。「見返してやる」という気持ちが、ドコモ幹部のモチベーションになっていた時期もあった。
ドコモの初代社長、大星公二氏は、それまでの自動車電話から携帯電話へとビジネスモデルをシフトさせた立役者。その流れが的中し1995年から始まった携帯ブームを背景に「NTTの文字は邪魔なだけ。ドコモだけでいい」と発言し、当時のNTT幹部の怒りを買ったと伝えられる。
持ち株会社であるNTT(日本電信電話株式会社)とドコモの関係は、この企業の将来を左右する問題だ。
NTTはドコモの議決権の66.6%を持つ。また、NTTの傘下には「東日本」「西日本」「コミュニケーションズ」「データ」などの各事業会社がぶらさがっている構図だ。ある中堅社員が語る。
「ドコモの社長を決めるのは持ち株会社。しかし、グループの利益の約7割を叩き出しているのはドコモです。ドコモの利益で“お荷物”の東日本と西日本を支えているのに、トップ人事も決められないことを快く思わない社員は多い」
「ドコモは独立すべき」という社員もいる。前述の大星元社長の発言も、それを意識したものではないだろうか。
NTTから引き継いだ厄介な遺産のひとつは、「官僚より官僚的」と言われる企業風土だ。他社から転職してきた幹部が語る。
「上層部に旧電電公社時代の入社組が多いからか、転職直後は報告のための報告、会議のための会議が多くて閉口した。最近は私のような転職組も多くなって、風通しがよくなってはきたが」
●取材協力/海部隆太郎(ジャーナリスト)、永井隆(ジャーナリスト)
※SAPIO2013年1月号