国内

自民党の圧勝 小選挙区制の特質と小党分裂の比例代表が理由

 いよいよ第二次安倍政権が本格的に動き出す。圧倒的多数の議席を得た自民党が今度こそ安定した政権を作れるか、まずは国会運営を見守りたい。デフレ不況に喘ぐ経済の復興、そして領土問題や国際協定に難題が山積する外交の舵取りが急務であり、安倍晋三・首相が力強いリーダーシップを発揮し、国土と国民、そして国益を守る政治を実現するよう期待したい。

 さて、安倍政権への期待や評価とは全く別の問題として考えておきたいことがある。先の総選挙で自民党が294議席、選挙協力した公明党と合わせて325議席を獲得して衆議院の3分の2(320議席)を超える巨大勢力を得たことが、本当に有権者の民意だったかどうかである。

 すでに新聞なども分析記事や解説で指摘していたが、自民党の比例得票率は惨敗した2009年総選挙とほぼ同じ27.6%にすぎず、得票数は1662万票と、前回より200万票以上減らしている。つまり、国民の支持が自民党に回帰したわけではなかったことは明白なのだ。

  ではなぜ圧勝したか。理由はふたつある。第一に小選挙区制の特質である。今回、いわゆる第三極が維新、みんな、未来に分裂して選挙戦を戦ったため、多くの選挙区で比較第1位は自民候補になった。

  例えば東京では、25の選挙区のうち21で自民が勝ち、残りは公明1、民主2、みんな1だった。ところが、各区で第三極3党(第三極系無所属含む)の得票数を合計すると、自民が勝った選挙区のうち7つでトップになる。仮に統一候補で戦うか合同して1つの党になっていれば、東京の小選挙区は自民14、公明1、第三極8、民主2だったかもしれない。これなら「第二極」と言える。

  小選挙区で死に票が多く、小党に不利であることを補正する意味で比例180議席があるわけだが、実はこれが自民圧勝を招いた第二の理由である。細かい制度の説明は避けるが、ブロックごとにドント方式で議席を配分する今の方法だと、結局は大政党が得票率以上の議席を得る。自民は57議席を得たが、これは全議席の31.7%に当たる。得票率は前述の通り27.6%である。ここでも第三極は得票率が議席に結び付いていないのだ。先の3党の合計比例議席は61(33.9%)だが、合計得票率は34.8%あり、これは自民党を大きく上回る。

  要するに、今の選挙制度は今回のような小党分裂、多党競合の政治状況には不向きで、頭ひとつリードした党があると一人勝ちになる。日本には1億3000万人が住み、1億人強の有権者がいるが、そのうちの1662万人が支持したにすぎない自民党が、衆院での憲法改正発議や参院否決法案の再議決までできる巨大権限を握ったことには違和感を抱かざるを得ない。自民党だから批判しているのではない。

  4年前には同じ現象で民主党が巨大与党を形成し、その結果がどうであったかは国民の知る通りである。今の制度では、何か国民の大きなムーブメントに乗ることがあれば、共産党政権さえ誕生しかねない危うさがあるのだ。

 ※SAPIO2013年2月号

関連キーワード

トピックス

裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン