書籍『ハーバード流宴会術』(大和書房)が話題だ。ハーバード大学といえば最高峰の教育機関だ。そして、その大学院にあたるビジネススクールと宴会術が即座に結びつかない読者も多いだろう。しかし、それは大きな誤解である。総合商社で宴会力の地力を身につけ、さらにハーバード大学ビジネススクールで、ノウハウをブラッシュアップさせた児玉教仁氏はこう語る。
「世界80か国から生徒が集まるハーバード・ビジネススクールの授業は、ディスカッション形式で進行します。ベースにお互いの信頼関係がないと議論も深まらない。そうした人間関係を構築する目的で開かれるのが宴会です。ハーバードは別名ティーパーティースクールと呼ばれるほど頻繁に宴会を催しています。そして、その企画立案にはハーバード流のビジネスマインドも詰めこまれています」
ここでは重要ポイントを2つ紹介しよう。
【「盛り上がり」よりも、「盛り下がり」に注意すべし】
席決めの際にはハーバードで教わる「BATNA」(交渉が決裂した際に取れる最良の選択肢)の考え方も用いたい。会の盛り上がりが最高潮になることよりも、いかに盛り下がりを防ぐかを考えるのだ。具体的には「よく喋る人を角の席にする」「喋らない人をよく喋る人の隣に配置する」「よく喋る仲良しは席を離す」など。その要諦はひとり輪から外れる“宴会貧者”をなくすことにある。
「宴会は信頼関係構築の場です。普段職場で言いたいことを我慢している出向社員さんや派遣さんに組織に打ち解けてもらう会を志すべき。親しい人間で固まることや、女性社員が上司の相手をしなければならない配置は避けるべきです」
【立食よりも着席を選べ】
様々な人間の交流を促すといっても、立食パーティーは避けたい。
「海外で定番の立食パーティーは夫婦同伴二人で参加するように設定されている。カップル間で会話を楽しみながら、合間に会場にいる知人をお互いに紹介しあいながら展開します。ところが、1人で会場を歩き回るスタイルの日本の立食パーティーでは、上司や初対面の方に声をかける勇気がない人の孤立を生みかねない」
立食パーティーは「自由度」が高い代わりにコントロールが利かず、参加者に幹事の思いが浸透しない。実際に会が始まってからも、難題は山積している。
※週刊ポスト2013年2月1日号