この4月から施行される65歳定年制(雇用延長義務づけ)導入で企業の賃金体系見直しが進んでいる。その一つが「定年年齢選択型給料」で55歳時に、給料は現状維持のまま60歳で退職するか、それとも給料ダウンで65歳まで働くかを選択するというものだ。
少しでも増えるならまだいい。雇用延長したために逆に生涯賃金が減るケースもある。
NTTグループは2002年に「50歳」からの雇用選択制度を採用した。電話回線の保守管理など現業部門の社員は60歳退職なら給料水準は変わらないが、雇用延長を選べば、50歳で退職して子会社に再雇用され、給料は勤務地によって東京勤務なら15%、九州や北海道・東北勤務は30%カットされる。60歳以降は契約社員となり、給料は年収200万円程度まで下がる制度だ。
入社同期のAさんとBさん。これまでは給料も出世コースも同じだったが、Aさんは50歳の選択で、「妻に任せている親の介護を早く分担しよう」と60歳のリタイアを選び、Bさんは「子供がまだ小学生で60歳以降も教育費がかかるから」と65歳までの雇用延長を選択した。2人の社員のその後の給料総額がどう変わるかを比較した。
50歳時点で年収700万円だった地方勤務のAさんの収入は50歳からの10年間で7000万円になる。一方、Bさんは5年間多く働いたにもかかわらず5900万円と、約1000万円も下がっているのである。
東日本NTT関連合同労働組合(第2組合)の斎藤隆靖・幹事が語る。
「継続雇用の社員は60歳定年を選んだ社員より10年間で約1000万円から約1900万円、給料が減らされます。60歳からの5年間、年収200万円程度の契約社員で雇用されても5年分の給料総額は1000万円で、雇用延長するとかえって生涯賃金が減る人が多い」
※週刊ポスト2013年2月15・22日号