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50歳までフリーランスで生き残る方法を51歳・石黒謙吾語る

昨年末。51歳にして金髪に。豆柴センパイ、捨て猫だったコウハイと

これまで著書では映画化もされた『盲導犬クイールの一生』、プロデュース&編書では『ジワジワ来る○○』シリーズなどのヒット本を、18年で200冊近く作り続けてきた著述家・編集者の石黒謙吾さん。このたび、『7つの動詞で自分を動かす ~言い訳しない人生の思考法』(実業之日本社)を上梓しました。

同書は、石黒さんがこれまで仕事や人付き合いを通じて体得した「受動的な“名詞”ではなく、能動的な“動詞”で動いた方が仕事・人生はうまくいく!」をまとめたものです。たとえば、「気づき」よりも「気づく」、「つながり」よりも「結ぶ」といったところですね。記者は39歳のフリーランスですが、果たして石黒さんは51歳までいかにして「動詞」を使って仕事を獲得し続けられたのでしょうか。その秘訣を聞いてきました。

――なんとか39歳までは来れたのですが、この後の10年間、40代をどうやってフリーで乗り切ればいいのでしょうか……。これからが不安です。

石黒:端的にいうと、仕事を「作っていく」ということが大事ですね。「貰う」ばかりだと発注する側の年齢を追い越した場合に仕事がなくなっていくことがよくありますから。自分でそこまでに、大なり小なり著者性、余人に代え難いアウトプットを確立することが肝ですね。

著者性といっても、どメジャーな誰でも知ってる何かじゃなくてもいいんです。グルメでもスポーツでもなんでもいいのですが、なんらかの自分らしい突破口を作らないと、「たくさんいる誰か」になってしまう。と言っても、必ずしもスペシャルなジャンルを作ることだけではなく、押し出しの強さだったり、人柄の良さだったり、根性(笑)だったりもオリジナリティと言えます。

そして、決してガツガツと過分にやることはないにせよ、多少は自分自身の活動をアピールしていかないと、結局は仕事を貰う一方になりがちです。能動的にやってるところを見せることで、企画の持ち込みなんかも可能になる。よほどの才能があれば別ですが、僕みたいにごく平均的な人が受動的になったら負けですね。仕事の礎を作れる人なら、じわじわとでも上がれるもの。

――石黒さんのキャリアを教えてください。

石黒:32歳までは会社員ではありませんでしたが、大手版元でフリー記者、契約編集者として8年間、事実上編集部等に属している立場でした。そして、33歳からは所属せず、完全にフリーランスで書籍の仕事を始めました。それほどがっついて「オレはどうしても本を出したい!著者になるんだッ!」みたいな気持ちはまったくありませんでしたが、36歳で著書を出しました。

それまで誰もやっていなかったジャンルとして、「分類王」と名付けたクリエイション、「チャートを用いた構造オチで笑いに持っていく」という、カルチャーというかサブカルチャーの面倒な(笑)な本を出しました。そういった自著を作りつつ、プロデューサー&編集者としては、パラダイス山元さんや、ナガオカケンメイの本とか、まだ本を出してない人の著書を作っていました。

今は、著者としては雑誌やWEBの連載はやっています。ただし、編集者としては、いわゆる「受け仕事」は昔から一切やっていません。その理由は、お金にはなるけど、長い目で先を見たら、時間と労力をかけてやらないほうがいいと思うからです。オリジナリティのある企画を持ち込んで作ったほうが面白いし、ストレスフリーですから。

みんな、「この雑誌やムックで20ページ作ってください」といった依頼を受けると、確かに簡単にお金になるので、やるワケですね。そうすると、また仕事がいただける。そういう人って発注主からすると便利なんです。

「あいつは希望通り、それなりのクオリティで作ってくれる」という評判が立つのは普通に考えればいいことですが、そのサイクルに入ると忙しくなって、本当に自分がやりたく、成長できる仕事をする時間がなくなってしまうんです。

――もったいない! 私なんか、つい受けちゃいますよ。明日の生活が苦しくなるんじゃないか……なんて思って。

石黒:受けた方がもったいないかもしれませんよ。僕はフリーになった時以降、「編集者としての」受け仕事は基本しない、と決めたんです。「能動的」というのは自分が面白い(売れるかどうかは別にして)と思ったネタや人を残すために自分の身体を動かすこと。誰も知らなかったナガオカケンメイが面白いと思って書籍企画を出版社に持ち込んで本にした。

すると、ずっとあとに彼がブレイクし「ナガオカさんの本、石黒さんがやってたんですね?」みたいな話が出て、編集者としての一方向のエッジが立ったりとか。それは計算してるんじゃなく、愚直にぶつかっていたらそうなったってだけの話ですが。

――その後来たのが87万部のベストセラー、『盲導犬クイールの一生』ですね。結局売れるにはどうすればいいのですか?

石黒:元々はクイールの写真集を作ろうとしていたんですよ。この例はともかくとして、売れる企画や人ってすべてが優れていて、時の運もあるなんて言われがちだけどそんなことありません。この世界、不器用で社交性もなく、仕事依頼も少ない人がポーンと出たりもするんですよ。能力の問題ではなく、若いうちにエッジの立った著書出した人が、なんとなく有名になり、そこそこうまくいったりするケースもありますね。

目的が大金や「超ビッグになりたい!」といったものでないのなら、オリジナリティあるエッジを立てれば、そこそこ気持ちいい、過ごしやすいポジションにはいけると思います。僕自身、お金には執着ないし実際に縁もないですが(笑)、ほとんどストレスためずに好きなネタや人の仕事ができていることは幸せだと思ってます。

僕は興味がないですが、お金を貯めたいならそれはそれで目標にして能動的にがんばればいい。いかにも売れそうなビジネス書を計算して狙って出すのもいいでしょう。フリーで心地よく生き残れる人は才能だったり性格だったりマジメさだったり人それぞれでしょうが、たくさん企画を持ち込んで、それでどんどん失敗しても愚直に進める人もひとつあると思う。

僕はそんなやり方ですね。『盲導犬クイールの一生』だって、11社目でやっと通ったと思ったら、その後もその会社で人事異動が2年続けてあったため、さらに2回ボツになった末に形になったんですから。

【石黒謙吾(いしぐろ・けんご)】
著述家・編集者・分類王。1961年金沢市生まれ。これまでプロデュース・編集した書籍は約200冊。著書に『2択思考』『盲導犬クイールの一生』『ダジャレヌーヴォー』など。プロデュースした書籍には『ザ・マン盆栽』(パラダイス山元)、『ナガオカケンメイの考え』(ナガオカケンメイ)、『ジワジワ来る○○』(片岡K)など。全国キャンディーズ連盟(全キャン連)代表。雑誌編集者時代に雑誌における女子大生の呼称「クン」を確立させる。


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