ライフ

高級革ジャンに味噌汁をこぼされ価値半減 適切な賠償額は?

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「高価な革ジャンに味噌汁をこぼされ、価値半減。賠償を求めたい」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 寿司屋で店員が私の背中に味噌汁をこぼしました。背中はヤケドを負い、店側は治療費を払うと約束。但し問題は私が着ていた高価な革ジャンで、今回の件により価値が下がりました。店側はお詫びとして1万円は支払うが、それ以上は無理とのこと。この場合、1万円で納得しなければいけませんか。

【回答】
 店員の行為は不法行為であり、店員を雇っていた寿司屋は、使用者責任を負い、客に発生した損害を賠償する責任があります。賠償すべき損害は、不法行為と因果関係があるものでなければなりませんが、合理的な範囲にとどめるため、いろいろな理屈で限定する考えがあります。

 伝統的な考え方は、通常発生する損害が賠償対象となり、特別な損害は予見できた時に賠償されるという考え方です。味噌汁をかければ着衣は汚損することは容易に予見できますし、交通事故でいえばいわゆる物損ですから、革ジャンの汚損が損害であることは間違いありません。

 次にその賠償額ですが、合理的な方法で算定することが必要で、不法行為前の状態を回復するのに一番経済的な方法は何かということになります。もしクリーニングで復元できるのであれば、その料金が買うより高くつくという特別な場合でない限り、損害はクリーニング代です。

 味噌汁がかかった程度で、クリーニングできない場合があるのか不明ですが、価値が下がるという趣旨がクリーニングしても臭いやシミが取れないということであれば、確かに品物として価値が下がっており、その分は損害になりそうです。

 しかし、損害の証明は難しいと思います。なぜなら損害は、事故前の価値と汚れが取れない革ジャンの価値の差額ですが、前者はあなたが使い込んでいるので、通常買値より減価しているはずですし、後者については客観的価値の算定は、中古市場でもない限り証明困難だからです。

 そこでクリーニング屋で、クリーニングの可能性と料金を確認し、ある程度回復できるのであれば、その料金と1万円を比較して、対処を考えればよいと思います。クリーニング代が1万円以上であれば、寿司屋に損害賠償として要求できるでしょう。

※週刊ポスト2013年3月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン