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女給が隣に座り酒を出す大正時代のカフェがキャバクラの起源

 世界でも例を見ない独自の発展を遂げ、いまや5兆円ともいわれる産業規模を誇る日本の性風俗産業。この独自の発展を理解するには、遊廓が誕生して以来の、長い歴史を学ばなければならない。

 内務省は1900年に娼妓取締規則を制定して、娼妓稼業に関して全国的な統一基準・規制を作成した。この法令は一般的に近代公娼制度を確立したものといわれている。

 その一方で、遊廓の凋落が徐々に始まっていた。遊廓の娯楽性が消失したことが原因だと風俗史家の井上章一氏はいう。
 
「江戸時代の吉原では、大名がお金を積んでも嫌なら断わるというプライドが女郎にあり、実際に断わられることもあった。床に入るまでは、何度か通って飲み食いして口説く必要があり、いざ床に入る日には、結婚式の儀式である三三九度の盃をあげたようです。
 
 しかし、明治時代の中ごろには、遊廓はお金を払えば誰でも性交ができる場所になり、粋な男の遊び場としては遊廓よりも芸者のほうがいいといわれるようになった。芸者さんはお金を積んでもセックスができるとは限らない。簡単に落ちない女性を落とす“娯楽性”が求められたのです」
 
 一方で、女性を落とすプロセスを楽しむという現在のキャバクラ文化につながる風俗に人気が集まり始めた。大正時代には、女給が隣に座り酒も提供される「カフェ」が誕生し、客は売春では味わえなくなった「疑似恋愛」に興じた。
 
 こうして日本の遊廓文化は、ソープなどにつながる性欲処理型の風俗と、キャバクラなどにつながる疑似恋愛型の風俗に枝分かれしていった。

※週刊ポスト2013年6月7日号

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