少子化が進行する一方で、子供を欲しがるカップルも少なくない。妊娠を望む妻が「今日は排卵日だから……」といって夫に迫るのはよく聞く話。だが、排卵日が最も妊娠しやすいタイミングというのは間違った常識だ。
米国の生物統計学者である、デビッド・ダンソン博士が、妊娠希望で避妊をしていないカップルだけを集めて行なった実験によると、妊娠しやすいのは排卵日の5日前から排卵日当日までの6日間で、なかでも最も妊娠したケースが多かったのは、「排卵日の2日前」だったという。浅田レディースクリニックの浅田義正院長の話。
「排卵してから精子がやってきて出会うより、精子が卵管に入って待機している時に排卵が起こるほうが妊娠しやすいとされます」
膣内は通常、酸性の状態だが、排卵前からアルカリ性の粘液が増加してくる。精子はこの粘液の中を泳いで子宮に向かうが、排卵日以降は膣内がアルカリ性から酸性に戻り、精子が生存しにくい環境になる。排卵日当日のセックスでは、精子にとって良くない環境になっている場合もある。
前出・ダンソン氏の研究には、もうひとつ注目すべき報告がある。排卵の曜日が、週末やその直後に偏在しているというものだ。この研究結果からダンソン氏は「セックスが排卵を誘発しているかもしれない」と指摘している。週末は、カップルがセックスする時間をつくりやすいと考えたのである。
「交尾の刺激によって排卵が起きる仕組みは『交尾排卵』と呼ばれるもので、哺乳類では珍しいことではありません。ネズミやウサギの雌は発情シーズンに交尾すると、それを合図に排卵が起き、妊娠の確率性が増すのです」(出産専門ジャーナリスト・河合蘭氏)
ネズミのようにはいくまいが、妊娠への近道は、性的な衝動を抑制しないことにあるのかもしれない。
※週刊ポスト2013年6月14日号