ペットの犬のリードを子供に持たせて散歩している光景を見かけることがあるが、実はこれ、ものすごく危険なことなのだという。科学的な理論に基づく犬のしつけを指導する「Can! Do! Pet Dog School」の主宰者・西川文二氏が、その危険性を解説する。
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某俳優夫妻所有のドーベルマンが、同じマンションに住む住人に噛みついた、っていうニュース。慰謝料がどうとか、被害者側の転居に伴う損害をマンションの管理会社が請求したとか、いろいろ報じられてたけど私めのシッポが、いや聞き耳がピンと立ったのは、その事故の際に犬のリードを手にしていたのが、なんと6歳の子供だったっていうくだり。
ドーベルマンを6歳の子供がコントロールできるん? 思いっきりダッシュしたら、大人だって引き倒されかねない。なにもこの事件に限らない、子供にリードを持たせるってのは。危険なことを百も承知のはずなのに、小さな子供になぜ飼い主は、リードを持たせてしまうのか? 答えは明白。「リードを持たせろ」っていう子供の「だだ」に、根負けするから。
1回でもその「だだ」に白旗をあげれば、子供は毎回リードを持たせろと要求してくる。当コラムの読者であればおなじみの「いいことが起きた行動の頻度は高まる」ってのに、ドンピシャはまっちまうってこと。
小型犬なら引き倒される危険もない、なんてのも甘い考え。急に犬が走り出し、その拍子にリードが手から抜け落ちちゃって、子供の目の前で犬が車にひかれたなんて事故を、私めは知ってる。
そうはいっても、子供は犬のリードを持ちたがるもの。それも、根負けするくらいにしつこくね。そこで、私めはいつもこうアドバイスしてる。リードを2本つけよ、ってね。もちろん、1本は飼い主が持つ。で、子供の後方から、そっとついて歩く。「○○ちゃんはお散歩が上手ね」なんて、おだてながらね。
相手をたてつつ、こちらが主導権を握る。営業手腕に長けたご貴兄であれば、お茶の子さいさいってモンでしょうに、この作戦!
※週刊ポスト2013年6月28日号