「池袋」のあるエリアが“アキバ化”しているのをご存じだろうか。池袋サンシャイン60の足元、「サンシャイン前」交差点から「東池袋三丁目」交差点までの約200mほどに、女性オタクを対象としたアニメグッズなどを扱う専門店が密集。さらに、“イケメン女性”が執事風コスプレで女性に給仕する「男装喫茶」が十数店舗立ち並んでいる。おかげで、あたりに広がるエリアが「乙女ロード」と名づけられた。
しかし、そもそもなぜこのエリアに女性のオタクが集まるようになったのか。サブカルチャーの動向に詳しい武蔵野学院大学の佐々木隆教授の話。
「1980年にアニメ専門店のアニメイト池袋店がオープンしたのが最初のきっかけです。男女問わず、アニメファンが多く集まるようになりました」
しかし、1988~89年に宮崎勤による連続幼女誘拐殺害事件が発生。宮崎がアニメオタクだったことが事件と関連づけて報じられたために、同じ趣味を持つ者に対する風あたりが強くなり、一連の文化はその後しばらく下火に。
「オタクへの偏見も薄らいできた2000年頃、アニメイトの戦略が変わったんです。はっきりと女性をターゲットにした商品を扱うようになった」(佐々木氏)
イケメン男子同士の恋愛を描く、いわゆる「ボーイズラブ系」のマンガ・アニメもそのひとつだ。
「時代劇の主人公をイケメン風に描いたような作品が広がり、歴女ブームとも相まって、キャラクターグッズがブレイクしました。これらをアニメイトを中心とした専門店が扱うようになったのです」(佐々木氏)
もともとサンシャイン60の1階にはコスメショップなどが多くあり、一帯は若い女性への求心力があった。このような事情が背景となり、乙女ロードの下地ができていったのだ。
また、オタクの聖地・秋葉原との差別化の動きも乙女化に拍車をかけた。端的に表われているのが「男装喫茶」だ。
「カフェタイム(15~18時)は男子禁制です。当店は2005年にオープンし、今ではこのエリアで一番の老舗になりました。スタッフもマンガやアニメ好きなので、お客様とオタトークで盛り上がっています」(男装喫茶『80+1』経営者の吉良歩さん)
今日もオタク男子は秋葉原、オタク女子は池袋を目指す──。
※週刊ポスト2013年7月12日号