108才まで生きた「ぎんさん」の娘4姉妹も全員が90才超えのご長寿だ。だが、そんな4姉妹には、加齢とともに抱えてきた共通のウイークポイントがある。それは、70代半ばで歯がほとんど抜けてしまい、以来、ずっと入れ歯(義歯)に頼らざるをえなくなってしまったことだ。
千多代さん(三女・95才):「考えてみりゃ、わしらの子供の頃は、今みたいに、きちんと歯を磨くっていう習慣がなかった」
百合子さん(四女・92才):「そうそう、歯ブラシなんかない。粗塩をつけてね、指でごしごしするってのが、歯磨きだったよ」
年子さん(長女・99才):「そりゃあ、年頃になってからは、歯ブラシを使ったが、私なんかものぐさだで、いい加減にしとったら、そのつけがワーッときて、“歯なし婆さん”になって、かれこれ20年以上だがね(笑い)」
美根代さん(五女・90才):「4人の中で私がいちばんひどい。歯周病でね、65才ころから、次々と抜けた。残った歯が痛くなって、肩がこる、頭痛がする、それが嫌でねえ。そいで初めて、ああ、歯っていうのは大事なもんだってのがわかった」
千多代さん:「そこへいくと、私は上あごの歯がどうにか5本残っとる。けど、下あごの入れ歯が合わんで、ときどき炎症を起こして往生することがあるよ」
80才で自分の歯を20本維持する、いわゆる「8020運動」が盛んにいわれるようになったが、残念ながら姉妹たちは該当しない。しかし、悲観することはないという。『不老は口から』(光文社刊)などの著書がある鶴見大学歯学部教授の斎藤一郎さんが言う。
「高齢になって歯が抜けてしまっても、歯医者さんに行って、しっかり口の環境を整えれば問題ありません。大事なのはよく噛むことです。咀嚼によって脳の血流が改善され、脳が活性化されます。また、脳の老化を防止することができるだけでなく、よく噛むことで口の周りの筋肉トレーニングにもつながり、若々しい表情を保つことができます」
千多代さん:「確かに、私らは歯がなくても、よく噛んで食べることは怠ったことがないがね。それというのも、おっかさん(ぎんさん)が“ご飯は、よーく噛んで感謝して食べる”と口癖のように言わしていたから。今でも、ひと口のご飯を20回は噛んで食べるよ」
百合子さん:「けんど、口に入れるたびに10回、20回なんて数えていたら、ご飯がまずくなるがね(笑い)」
年子さん:「アハハハハ、そりゃそうだ。けんど、よう噛まんとごっくんとのみ込んだら、食べ物がのどに詰まって、窒息するかもしれんしな(笑い)。今は、昔以上によく噛んどるよ」
美根代さん:「なーるほど、噛むことをさぼったらますます“老け顔”になるということだがね。よーし、今日から100回は噛むことにしよう」
千多代さん:「おみゃあさん、そんなことしたら、あごが外れちまうよ、ハハハハハ」
※女性セブン2013年7月11日号