ライフ

「ちょいバカ」「ちょいブス」自分低く見せる処世術が流行中

 自分自身のブランド化を指す「セルフブランディング」はすっかりお馴染みの言葉となったが、現在はちょっと違う動きも見られるのだという。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が語る。

 * * *
 「マイナスセルフブランディング」の話をしましょう。

 突然ですが、皆さんは「負け犬」という言葉はご存知ですか?知っている人も多いことでしょう。もともとは酒井順子さんが2003年に発表し、ベストセラーになった『負け犬の遠吠え』(講談社)から広まった言葉です。この本は、講談社エッセイ賞は婦人公論文芸賞を受賞。2004年の流行語大賞にもベストテン入りしました。

 では、皆さん、「負け犬」の意味をご存知ですか?実はこの言葉、だんだん意味が変化していったのです。やや余談ですが、先日、女性向けセミナーで講演した際も約40人中、『負け犬の遠吠え』を読んだことがある人は1名でした。皆、知らずに使っているのです。

 美人で仕事ができても、30歳以上、未婚、子供がいないという3条件が揃った女性は負け犬であり、自分たちは所詮、負け犬なんだというレッテルを貼っていた方がうまくやっていける、ちゃんと結婚して子供もいる女性を尊敬しよう、もともとはそんな内容でした。次第に転じて、30代以上の未婚女性を指す言葉になり、やや蔑視の意味で使われるようになりました。そういえば、当時、職場で意味をちゃんと知らないのに「負け犬」という言葉をどうしても使いたい偉い人がいて、「◯◯さんって負け犬だねえ!」と女性社員に言うという修羅場を体験しました。ちゃんとチクれば、セクハラ懲戒でしたね。

 もともとは、「マイナスセルフブランディング」つまり、自分のことを最初から低く見せるというやり方だったのです。そして、この「マイナスセルフブランディング」のトレンドが、いままさにきています。「ちょいバカ」そして「ちょいブス」です。

 まず、「ちょいバカ」について。あまりにも学歴が高すぎると、手を出しにくいのではないかと思われてしまうわけです。この学歴と恋愛というのは、悩ましい問題です。というのも、高学歴女子というのは、在学中はそこそこモテるのですが、卒業後になると一気にモテなくなるのです。ずばり、学歴の「ラベル」が自分と同じか、高い人でなければバランスがとれないからです。

 まあ、在学中モテるのも、男女比による部分というのはあります。リクルートエージェント(現:リクルートキャリア)が発行する『HRmics』の第10号の集計によると、世の中全体の学生に占める女子率は約42%なのですが、旧帝大+早慶にしめる女子率は約30%。しかも、社会科学と理工系の学部にしぼってみると19.2%しか女子がいません。大学時代は逆ハーレム、恋愛ガラパゴスになるわけです。

 でも、外に出ると厳しい荒波に飲まれます。在学中でも学外だと、大学名を言うと恋愛の対象にされないのではないかと懸念するわけです。

 そこで「ちょいバカ」というマイナスセルフブランディングに走るわけです。例えば東大女子は、早稲田だとか、日本女子大だと経歴を詐称して合コンに臨むわけです。先日、一橋大学の大学院に通う女性は、先日、東大卒で官僚という友人と一緒に街コンに参加した際、東大卒の友人の方は見事に学歴や仕事を詐称していたとか。まあ、突然そのプロフィールを語られても、ひきますよね……。

 同じようなマイナスセルフブランディングのテクニックとも言えるのは「ちょいブス」です。もともと、最近、『ちょいブス』の波がきていました。指原莉乃のAKB48総選挙1位などはその象徴でした。私は十分かわいいと思うのですけどね。あまり可愛すぎるとモテないのではないかということで、あえてちょいブスくらいに見せる手法が若い女性向けのファッション誌で紹介されるようになりました。高嶺の花よりも、身近なちょいブスだというわけです。

 意識の高い(笑)男子学生諸君。女性はずっとしたたかで、マイナスセルフブランディングこそ最強と思っているわけです。昨年は安藤美冬さんの「名刺に足立区と書くな」なんていう発言が話題になりましたが、時代は「ちょいバカ」「ちょいブス」です。あえて、自分を大きくみせず、小さく見せる。これもまた優れた処世術ですよ。

 そうそう、最後に宣伝ですが、『ちょいブスの時代』(宝島社新書)という本を出しましたよ。時代は女子力よりもブス力。仕事と恋愛の革命的変化をレポートしています。特に女子に読んでもらいたい、希望の書です。ぜひ。

関連キーワード

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン