国内

「死ね」「殺せ」叫ぶ嫌韓デモ 「もはや参加者の娯楽」評も

 8月15日、靖国神社周辺では、毎年恒例の「反天連」(反天皇制運動連絡会)による大規模デモ行進が行なわれた。このデモを、極左集団と在日韓国・朝鮮人が一体となった活動と位置づける在特会(在日特権を許さない市民の会)は、「カウンター」と称した抗議活動への集結を呼び掛け、1000人を超える有志を動員したという。

「天皇反対!」「靖国反対!」と叫びながら練り歩くデモ隊に、在特会メンバーとその支持者たちは「ゴキブリ朝鮮人を日本から叩き出せ!」「朝鮮人を殺せ!」などと罵詈雑言を浴びせた。左翼への批判よりも在日韓国・朝鮮人へのヘイトスピーチが目立った。

「今年に入り、在特会の抗議活動の様相が少し変わってきました。それまでも散発的に『死ね』『殺せ』という言葉が使われていましたが、それが標準になってしまったのです」

 そう話すのは、在特会に詳しいジャーナリストの安田浩一氏だ。

「最近の在特会の抗議活動では、『朝鮮人をぶっ殺せ』『毒を飲め』『首を吊れ』といったプラカードが当たり前のように掲げられています。過激な表現を躊躇う人はパージされ、言葉の過激化が進みました。在日韓国・朝鮮人をゴキブリ、ウジ、ダニ呼ばわりする低俗なヘイトスピーチが日常的に行なわれているのです」

 在特会は様々な名目で活動を全国展開しているが、最大の標的は在日韓国・朝鮮人だ。国内を代表するコリアンタウンのある東京・新大久保では、昨年から在特会による激しいデモが繰り返されてきた。

「新大久保での在特会のデモを取材し、醜悪だと感じました。彼らの目的は在日への抗議ではなく、あの場で騒いで発散し、群衆の耳目を集めることです。韓国系のショップ店員にいきなり『竹島はどの国のものか』と議論を吹っ掛けたり、韓国料理店で食事をする客に『恥を知れ!』などと罵声を浴びせる。抗弁できない属性を攻撃対象にして優越感に浸っているだけです。もはやヘイトスピーチや抗議デモは、彼らの娯楽になっている」(安田氏)

 評論家の呉智英氏もこう断言する。

「在特会の活動は、面白半分で弱者をいじめて騒いでいるだけ。抗議の中身に論理性や根拠といったものは希薄です。そもそも彼らには右翼思想などありません。日本における右翼の伝統を考えると、正統派の右翼は必ず『アジア解放』を考えるわけです。良し悪しの議論があるにせよ、アジアは連帯しなければならないと考える。在特会のように『韓国、朝鮮の連中は汚らわしい、けしからん』というのは感情論が先行しているだけです」  

※SAPIO2013年10月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン