ビジネス

就活時期繰り下げの裏で「イン活」「配活」なる言葉も出現

 2016年度の新卒から就活時期が繰り下がることが決まった。しかし罰則がなく「要望」にとどまるため、実現性が疑問視されているという。また「イン活」「配活」なる言葉も生まれた。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が解説する。

 * * *
 大学生の就活について、今起きている変化をお伝えしましょう。

 今年の就活界、最大のニュースといえば、就活時期の繰り下げです。2016年度の新卒、つまり現在の大学2年生の代から、採用広報活動のスタートが大学3年生の3月に、選考が大学4年生の8月になります。今年の3月に内閣府の若者・女性フォーラムなどで検討され、4月に安倍晋三首相が経済団体首脳に要請。容認されたことから、確定的になりました。

 ただ、これを受けて9月13日に経団連が発表した、「採用選考に関する指針」(就活のガイドラインである倫理憲章を改訂したもの)に対して人事担当者と大学教職員から「結局、何をしたいのか?」と疑問視する声があがっており、失笑すら聞こえてきます。

 当初の想定どおり、採用広報活動のスタートは大学3年生の3月、選考開始が大学4年生の8月となりました。対象は、企業に賛同するかどうかを確認していた倫理憲章とは違い、経団連に参加する全企業となりました。ただ、以前と同様に罰則規定はありませんし「政府からの要請なので、守ってほしい」と促すにとどまるようです。

 当初から私はこの問題を偽善、茶番だと批判していましたが、それが現実になってきましたね。

 以前の倫理憲章は、賛同するかどうかは企業の判断にまかせていました。そのため、全企業が対象ではないということで実効性が疑問視されていました。ただ、まだ「賛同する」と企業が表明し、そのリストが公表されるため、一定の抑止力にはなると言われていました。

 今回の取り組みは、どの企業も対象である変わりに「守ってね」というゆるい要望になるわけで。意地悪な言い方をするならば、抜け駆けOKです。さらに言うならば、経団連に加盟していない企業はやぶり放題です。ベンチャー企業や外資系企業はこれまで通り、早期から選考を行う流れです。

 また、エントリーシートなどの受付は8月1日以前もOKとなっています。大学関係者によると、これは経団連が死守したかったポイントだとか。正式な内々定は8月1日となるものの、すでにそれまでにターゲットとしたい上位校の選考は終わり、8月1日以降の選考は、残りの枠の奪い合いになるのではという見方がされています。

 大学関係者は戸惑っています。というのも、就活時期の繰り下げは、当初は大学関係者から出た要望だったからです。しかし、決まってから「本当にやるのだろうか?」「表のルールと裏のルールはそれぞれどうなるのだろう?」「ウチの大学は今後も企業に選ばれるのか?」という声が聞こえてきます。

 さて、もうすぐ12月から2015年度の就活が解禁になるわけですが、学生も企業も既に戦いは始まっています。特に企業にとって2015年度採用は、2016年度採用の予行練習と化しています。いかにルールをすり抜けつつ、学生に早期に接触するかということです。

 企業が特に力を入れているのは、インターンシップです。ここでつばをつけ、囲い込もうというわけです。実施率、受け入れ対象は増加傾向です。都内私大によると、その大学からのインターンシップ受け入れ人数を3倍にした企業もあるとか。

 さらに、一部の企業では受け入れ期間をこれまでの10日程度から倍近くに延ばす動きも。これにより、学生に他社のインターンシップに参加させないようにしたり、より強烈に自社についてインプットするつもりでしょう。

 たとえ、その人を採用するに至らなくても、学生の間でのクチコミ効果が期待されます。学生たちに就職先として認知されるわけです。

 ちなみに、学生たちのFacebookを覗いていたのですが、一部の企業では、学生にFacebookでのクチコミを強要しているのではないかというくらい、インターンシップに参加した学生が同じような文面で、その充実ぶりをアピールしているのですね。採用担当者の影を感じざるを得ません。

 就活に積極的な学生を中心に、インターンシップをハシゴするという動きも目立ってきました。インターンシップに前のめりになる行為、およびそこでのコネ作りなどを称して、「イン活」という言葉も生まれつつあります。

 というわけで、就活時期の繰り下げは、逆に就活の早期化・長期化につながりそうな予感です。まあ、すべての学生が踊らされているわけではありませんが。

 さらに、就活の長期化につながりそうな動きがあります。それは「配活」ムーブメントです。これは内々定が出た後、「希望通りの配属のために頑張る活動」のことです。

 総合職の採用の場合、配属先の部署、職種、勤務地は決まっていないことの方が多いわけです。これを希望通りにするために、内々定が出たあとなのにも関わらず、ウリにできる体験を増やしたり、英語のスコアを上げたり、希望部署の人脈づくりのために再度OB訪問をしたり、インターンやアルバイトで顔を売ったり、内定者の集まりで人事に猛アピールしたり・・・。就活後も、入社後に希望するステージで最高のスタートを切るために余念がないわけです。

 大きなムーブメントにはなっていませんが、学生食堂で学生の声に耳を傾けているとよく聞く言葉ではあります。イン活と違い、どちらかというと学生が勝手に頑張っている活動ではありますが。

 というわけで、政府や経済団体が掲げたキレイ事とは裏腹に、ますます全身就活社会になってきている気がします。はい。

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト