「焼酎ハイボールは甘くないのに、やさしくのどを通っていく」(40代・会社員)
カウンターの端で、人々を見守るようにうなずきながら飲んでいる男がひとり。
「紋別でがんばっている若い連中と知り合えたのがうれしいんだよ。同時に、いろんな酒に出会えたのもうれしいね。なかでも、焼酎ハイボールはインパクトがあったなあ。甘いもんだと思い込んでごくりとやったら、気持ちいいほどそっけないドライ。すぐにはわからなかったけど、やがてこの酒のうまさに気がついたね。紋別の空気のうまさもあるのかもしれないけどね」(建築業・50代)
果敢に角打ちを仕掛けた範靖さんの趣味はアクアリウムの一種であるビーシュリンプ(体調1~3cmのエビ)の飼育。カウンターの端にその水槽が置かれている。
「うちのつまみは缶詰だけなんですけど、お客さんのなかには、酒をちびちびやりながらこの水槽を1時間も眺めている人もいますよ。美しさとかわいさで飽きのこない、最高のつまみなのかもしれないですね」
最高のつまみなら、この店の前の坂道を数分も下れば、旅人にはたまらないオホーツクの海だってある。
そんな範靖さんが抱く大望。
「これだけみなさんに受け入れられた角打ちですから、できれば、北見とか遠軽とかの町にも広げたいんです」
角打ち文化が育ち成熟していくことは、ファンにとってもうれしいこと。ノンダクレーズに負けずに、みんなで応援したいものだ。