ライフ

一橋大 全国紙でバッシングされた「伝説の学園祭」をOB懐古

 秋は学園祭シーズンだ。おじさんたちの「学園祭武勇伝」は事欠かないが、最近は飲酒規制などで大人しい傾向だという。新しい学園祭のスタイルはあるのか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が考察する。

 * * *
 秋です。学園祭シーズンです。大学の非常勤講師であり、大学院生でもあり、学生を前に講演する機会も多い私は、日常的に大学にお邪魔しているわけですが、キャンパスはすっかり学園祭モードになってきました。今どきの学園祭について考えてみたいと思います。

「昔の学園祭は、めちゃくちゃだったよね……」

 最近、知り合った50代半ばの漫画家はこう語ります。彼が学生だった70年代後半の学園祭では、夜中までバンドのライブがあったとか。みんなアルコールをガンガン飲みまくります。学内で公然とセックスをする者さえもいたそうです。それ以上に「やばい」ことも。大学の近くには毎年、パトカーが待機していたとか。都市伝説のようですが、本当の話です。

 私は90年代に学生生活を過ごしたわけですが、当時の学園祭もまだカオス臭はありました。母校一橋大学の学園祭では、サークル対抗歌合戦という名物イベントがあったのですが、要するに下ネタ大会なのですね。下品な替え歌、踊りに満ちていました。ブルーハーツの代表曲、「リンダリンダ」に合わせて、半裸の男たちが、ペットボトルを股間にあて男性器の名前を連呼するなどは序の口。歌合戦なのに、何故かステージ上で脱糞し、それを爆竹で爆破するというカオスな芸をする者も。

 さらには、「池落ち」という、酔ってみんなで大学の池にダイブするというイベントもありました。私自身は、飛び込んだことがないのですが、ちょうどこのイベントがある日に、サークルでプロレスラーの講演会を開いたことがあったのです。その時に、レスラーにトイレをご案内したところ、泥酔者がまるで野戦病院のようにゴロゴロと倒れており、「つ、常見くん!人が死んでいるよ!」と駆け寄ってきたことを覚えています。屈強な体格のレスラーが、ですよ。

 もっとも、こんなことがいつまでも続くわけがなく、「池落ち」に関しては、全国紙でバッシングを受けたこともあり、何より健康上危険であることは明らかで、90年代後半には禁止となりました。そのため、学園祭期間は学内の池の水はいったん抜かれることになっています。

 2010年代においては、学園祭の「浄化」が進んでいると感じます。特にうるさくなっているのは、飲酒関連です。ここ数年で早稲田、明治、法政、一橋などで学園祭期間中、学内での飲酒が禁止となりました。他、飲み過ぎと未成年の飲酒を避けるためのチケット制や、アルコールパス制(20歳以上である人はパスを首からぶら下げる)なども導入されています。もっとも、学生の飲酒による死亡事故は発生しており、大学側も敏感にならざるを得ないといえるでしょう。学園祭に限らず、学内での酒盛りまで禁止する動きはあります。もちろん、賛否両論あり、昨年は法政大学では飲酒規制反対を主張するデモが行われました。

 とはいえ、学園祭での飲酒規制を「けしからん」と言うつもりはありません。大酒飲みの私としては、参加者として飲めないのは寂しいですけどね。そもそも、若者のアルコール離れは進んでおり、実はアルコールを禁止したところで、当事者である学生たちは困らなくなっているのではないかと思うのです。アルコール離れが進んでいるからこそ、学園祭のような場で慣れない酒で盛り上がるのは危険なのです。

 学園祭でアルコールを規制することによって、「飲み方を教える機会がなくなる」という批判もあるでしょう。でも、所詮、学園祭など年に一度のものですよ。アルコールとの付き合い方を学ぶ場としては、普段のサークルやゼミでの飲み会の方がしょっちゅうあるわけです。

 個人的には、そろそろ学園祭の新フォーマットが必要だと思っています。焼きそばなどの屋台を出して、各サークルがお馴染みの発表をして、お馴染みの著名人が登場して講演して、なんとなくバンドを呼んで、意識高い人がビジネスコンテストで中途半端なプランを発表して……。もちろん、マンネリ化しているものには合理性があるわけですが。そろそろ新機軸が必要だと感じるわけです。

 これまでの定番企画であったとしても、学生ならではの、感度の高さを期待したいのです。「よくぞこのアーチストを発掘してきた!」「よくぞ、この論客にスポットをあてた」というような。

 全国には約780の大学があるわけですが、同じようなことをしているなとも感じます。やや優等生的な言いっぱなしですが、その大学らしさとは何かを考えたいところです。

 学園祭がお行儀よくなっていることには寂しさを感じつつも、時代の変化を感じます。ただ、では次の時代を創れているかというとそうでもないと思うのです。いよいよ学園祭が始まりますが、学生の皆さんには、新フォーマットの模索を期待します。

トピックス

和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン