ライフ

カロリーゼロ飲料 肥満に繋がり糖尿病の恐れありと医師指摘

 カロリーや糖質など、日本では「ゼロ」を謳った飲料が食品が大流行している。ところが、肥満大国アメリカでは「ゼロ食品で肥満リスクは高まる」という衝撃データが発表され、問題になっている。米ハーバード大学で研究員をしている大西睦子医師が語る。

 * * *
 自動販売機を前にして、「最近、お腹の肉がたるんできたから」と、カロリーゼロを謳った飲料を選んでいる人は多いでしょう。

 しかし、疑問に思ったことはないでしょうか。なぜカロリーがゼロなのに甘味があるのかと。カロリーゼロを謳う食品には、必ずといっていいほど人工甘味料が使われています。

 しかし、この人工甘味料は、体にさまざまな影響を及ぼし、ダイエットどころか、逆に肥満につながったり、糖尿病になったりする恐れがあることが、最近の研究でわかってきたのです。

 私がこのことに興味を持ったのは、肥満大国アメリカの現実を目の当たりにしたからです。ダイエット・ソーダを飲んでいるのにもかかわらず肥満の人が多く、それはなぜなのかという疑問が出発点でした。

 現在、欧米ではゼロ飲料に関する研究が進んでいます。テキサス大学ヘルスサイエンスセンターの大規模追跡調査により、毎日ダイエット・ソーダを飲んだ人のメタボリック症候群の合併リスクが36%、II型糖尿病(生活習慣に起因する糖尿病)のリスクが67%、それぞれ飲まなかった人に比べて上がることが分かりました。

 また、フランスの研究者らが行なった調査では、カロリーゼロのダイエット・ソーダを1週間に500ml飲んだ人たちは、カロリーありのダイエット・ソーダを同量飲んだ人たちより、なんと糖尿病のリスクが15%も高くなるという結果が出たのです。

 カロリーゼロなのに、なぜ太ったり糖尿病になったりするのでしょうか。その主な要因として考えられているのは、人工甘味料の副作用──「味覚を鈍化させる」「依存性がある」「ホルモンに作用する」の3つです。

 日頃から甘味の強いものを食べていると、甘味に対する感度が鈍っていきます。人工甘味料として長い歴史のあるサッカリンは、砂糖の200~700倍の甘味があります。現在、カロリーゼロ飲料に多く使われるスクラロースは600倍で、新しい人工甘味料であるネオテームにいたっては、7000~1万3000倍もの甘味の効力があります。

 少量の添加量で済むとはいえ、人工甘味料の強い甘味に慣れると、自然な甘さの果物や天然甘味料を使用したお菓子を食べたときに甘味を感じにくくなり、食べ過ぎたりするわけです。

 人工甘味料には依存性もあります。2007年にフランス人研究者が、ネズミを使った中毒性を調べる実験で、コカインとサッカリンのどちらを選ぶかを調べたところ、ネズミはサッカリンを選びました。「サッカリンはコカインよりも中毒性が強いのではないか」という論文は衝撃を与えました。さらに、人工甘味料は糖尿病の原因になるという疑いももたれています。

 すい臓から分泌されるインスリンは、脂肪細胞に働きかけて、血中のぶどう糖を脂肪に変えて貯め込むようにするので、「肥満ホルモン」と呼ばれます。“カロリーゼロ”はそのインスリンが分泌されないため肥満や糖尿病にいい、と思われてきましたが、いまアメリカでは、人工甘味料でもインスリン分泌を促す、という研究結果が相次いで発表されているのです。

 今年、ワシントン大学の研究者が発表した報告によると、人工甘味料スクラロースを飲んだ後と、水を飲んだ後を比較したぶどう糖負荷試験で、スクラロースのほうが血糖値のピークが高くなり、インスリンの分泌も約20%高くなったというのです。

 また、口や腸などに存在する甘味の受容体は、人工甘味料も、普通の甘味も同じように感知することも最近わかってきました。

 つまり、カロリーゼロと表示されていても、甘味を感じる分、同じように肥満や糖尿病リスクを高めるのではないか、ということがアメリカでは盛んに議論されているのです。

●大西睦子(おおにし・むつこ):医学博士。東京女子医科大学卒業後、国立がんセンター、東京大学医学部付属病院などを経て、現在ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究を進める。著書に『カロリーゼロにだまされるな 本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社刊)。

※週刊ポスト2013年10月25日号

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン