JR大塚駅にできたばかりの駅ビル「アトレヴィ大塚」1階に小さな店舗『おむすび伝』がある。にこやかな笑顔を絶やさず「むすび玉」を販売しているのはイケメン主人の萱森教之さん(46才)。新潟県の『かやもり農園』の11代目主人で、いま注目の米農家でもある。
「1998年に長女が生まれて、安全でおいしい米とは何だろう、と考えたんです。思い至ったのは、冷めてもおいしい米が本物ということ。だとしたら自分で作った米でおむすびを売ろうと、2001年に移動販売車を購入し、販売を始めました」(萱森さん・以下同)
萱森さんの考えているのは「消費者と直接農家が繋がること。安全な土を作って、米本来の栄養価を持ったコシヒカリを食べてもらうこと」だ。消費者と農家の関係ができていればこの先どういう時代が来てもやっていける、と萱森さんは語る。
新潟県のほぼ中央に位置し、北越の小京都と呼ばれる加茂市に、かやもり農園はある。
米農家『かやもり農園』の特徴はふたつ。まず、肥料には地元の加茂川に遡上した鮭を使っているということ。10月の中旬に加茂川の漁協を訪ねた萱森さんは「今年もよろしくお願いします」と、挨拶をした。
多い年では1万匹。生まれた川に遡り、死んでしまう鮭を引き取って焼き、1年半以上発酵熟成させる。こうしてできる「ぼかし」と呼ばれる肥料だけを、『かやもり農園』は使っている。そして、植物が本来の成長力と免疫力を発揮できる環境を整える「植酸栽培」が、ふたつめの特徴だ。
「植物自身が生きるために根から分泌する有機酸。これを稲に与えることで、稲の根が細かく、広く大きく育ちます」
与える鮭の肥料と、稲の栄養を吸い上げる力を助ける植酸。このふたつの独特なやり方で作り上げた米を、自分自身が店頭に立ち、消費者に直接販売するのだ。
※女性セブン2013年11月14日号