芸能

美川憲一さん「オネエになったのは2人の母の影響」と語る

 母はどんな時も無償の愛で包んでくれた。その偉大さを知ったのはいつのことだったか。慈母の記憶はいつも、懐かしい温もりとともに甦る。ここでは、歌手の美川憲一さん(67)が“2人の母”という米子さん(姉)、以し子さん(妹)との思い出を振り返る。

 * * *
 私には産みの母と育ての母、2人の母がいるの。2人は実の姉妹で、両者とも女優にスカウトされるような美人だったわ。

 産みの母(妹)と父の出会いは、長野から東京に向かう列車の中。結婚を前提に付き合ってほしいってナンパされたの。その後、東京のアパートで一緒に住み始めて、私を授かった。

 でも父は困った顔をしたんですって。そしてある日、「ビタミン剤だ。飲めば元気な赤ちゃんが生まれるぞ」と、赤い包み紙に入った薬を持って来たの。

 すぐ飲めと迫られたけど、母は「後で飲むわ」といってこっそり捨てた。女の勘が働いたのね。もし飲んでいたら、私はこの世にはいなかったわ。

 母のお腹が大きくなり続けるのを見て、父は姿を消したわ。母は生まれたばかりの私を背負って、父の千葉の実家にまで押しかけたの。

 そこには小さな女の子がいて、その子の母親が出て来た。父には別に妻子がいたのよ。要は騙されたのね。ワンワン泣く私を背負い、母も大泣きしながら帰ったそうよ。

 そうした苦労がたたってか、母は肺結核にかかってしまって、姉に私を預けたの。幼い私は事情を知らないから、物心ついた頃には産みの母のことを“おばちゃん”と呼んでいた。

 でも何か特別の愛情を感じることはあったわ。産みの母はしょっちゅう出入りしていて、運動会などの行事には来てくれたからね。

 事実を知ったのは中学1年の時。近所の人に聞かされた。いるのよ、そういうお節介ババアが(笑い)。でもともに可愛がってくれていたし、反抗することはなく、それからは2人の母として接するようになった。

 実はオネエになったのも、2人の母の影響が大きいの。私は小さい頃から、2人の母に派手で綺麗な服や靴を与えられて、「あんたは綺麗よ」といわれ続けた。

 母と銀ブラをすると、すれ違う人が振り返ったわ。2人の母からは、「あんたが綺麗だから見られるの。いつも綺麗に着飾っていないとダメよ」といわれたの。

 育ての母には歌舞伎や宝塚歌劇を、産みの母には映画や舞台に交互に連れて行ってもらった。宝塚は女性が男装し、歌舞伎は男性が女装するでしょう? 子供の頃から見ているから、私の中では男と女がゴチャゴチャになるわけよ(笑い)。

 だから当然オネエにも抵抗感はなかったわ。むしろ『柳ヶ瀬ブルース』の頃、スーツを着て直立不動で歌うほうが苦痛だった。それで『おんなの朝』の頃から色を出しはじめ、『さそり座の女』ではモロ出しよ。

 2人の母も「憲ちゃんに男らしさは似合わない」と絶賛してくれたわ。本当に励ましてもらった。

■美川憲一(みかわ・けんいち):1946年、長野県生まれ。1965年デビュー。代表曲に『柳ヶ瀬ブルース』、『さそり座の女』など。

※週刊ポスト2013年11月8・15日号

関連記事

トピックス

女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
渋谷の高級住宅地・松濤の物件を中国富裕層が“インバウンド購入”の実態 「ローンを組まずに現金払いが多い」と中国系不動産業者、“松濤爆買い”の今後はどうなるか
渋谷の高級住宅地・松濤の物件を中国富裕層が“インバウンド購入”の実態 「ローンを組まずに現金払いが多い」と中国系不動産業者、“松濤爆買い”の今後はどうなるか
マネーポストWEB