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水どう名物Dの企画術「ヒット生むためホウレンソウは無視」

昨年「どうでしょう」新作で訪れたアフリカの大地に佇む藤村氏

 じゃあ、どうやって自分の思いをカタチにするのか。それは、会社には何も言わないことです。僕が自分の「思い」や「発想」を口にするのは、「けど」も「でも」も言わない社内のごく少数の人と、あとは社外の人に対してだけです。

 社外の人はだいたい「それはおもしろい試みですね」と言ってくれます。だって彼らには直接のリスク責任がないから「おもしろい」と言うのは簡単なことなのです。そうやって外堀の評価を固めていって、先にある程度カタチを作ってしまってから社内に投げる。

 自分からは何も発想しない社内の「けどでも人間」は、社外の評価にはめっぽう弱いものです。「そうか、じゃあやってみろ」と首を縦に振らせるのはそう難しいことではありません(「もっと早く言ってくれよ」と必ず言われますけど、先に言ったら反対されるに決まってますから)。

 自分の発想をカタチにするには、会社に報告も連絡も相談もしない、「ホウレンソウ」を無視してやるしかない、私はそう思っています。

 これはとても非常識なやり方のようだけれど、でもきっと今までだって、新たな発想をカタチにしてきた人は、多かれ少なかれ会社という組織のカベに個人で闘ってきたと思うんです。

「会社論理」の膿があちこちで吹き出している今はなおさら、半沢のように個人で闘わないとなにも好転しない、それをやるのは、厳しい就職戦線で闘い続けてきた若い世代ではなく、バブルの恩恵に預かってラクをしてきた僕らバブル世代のつとめだとも思うのです。

【藤村忠寿/ふじむら・ただひさ】
1965年愛知県出身。90年に北海道テレビ放送(HTB)に入社後、編成業務やCM営業に携わり、1995年に本社制作部に異動。1996年チーフディレクターとして「水曜どうでしょう」を制作する。同番組は出演者に行き先や企画を伝えずに国内外を旅するバラエティー。タレントの大泉洋氏を世に送り出したことでも知られる。

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