ビジネス

水どう名物Dの企画術「ヒット生むためホウレンソウは無視」

自由で大胆な発想を貫く「水曜どうでしょう」の生みの親

 地方局の番組で、しかもレギュラー放送終了から11年も経つのに、いまだに絶大な人気を持続していられるのはなぜか。北海道テレビ(HTB)のバラエティー番組「水曜どうでしょう」である。

 過去の放送を編集したDVDは19シリーズで累計300万枚を販売し、関連商品を含めた売り上げは年間20億円をくだらない。

 そこで番組の生みの親である“藤やん”こと藤村忠寿氏(HTBエグゼクティブディレクター)に、ズバリ「マンネリにならない企画術」について語ってもらった。

 * * *
 昨年、TBSのドラマ「半沢直樹」が大ヒットしました。原作は池井戸潤さんの「オレたちバブル入行組」。バブル崩壊前夜に大量採用された今現在40代後半となった銀行員たちが主人公で、僕もまさにこの世代です。

 このいわゆるバブル世代の特徴は、就職がとてもラクだったために、会社への従属意識が今でも低い者と、大量採用されたために同年代の出世競争が激しく、逆に会社への従属意識がとても高い者とに、真っ二つに分かれることです。

 僕は完全に前者のクチで、会社は単に社員の集合体であって、会社と社員個人は対等であるという意識が強くあります。そうなると、個人を無視したいわゆる「会社論理」に対しては強い反発を覚えて、それを押し付けられると「倍返し」だって厭わない。まったくもって会社には嫌われる、自分勝手な社員とも言えるのかもしれません。

 でも「半沢直樹」がヒットした要因のひとつは、バブル崩壊以降の長い不景気の中で、コストカット、人員削減、偽装工作など利益最優先の「会社論理」が幅をきかせ、個人の仕事への思いや、その裏にある個人の生活がないがしろにされたことへのうっぷんが、社会全体にあったからだと思います。

 僕らが過ごしたサラリーマン生活の20数年間は、まさに「会社論理」が優先し、個人の自由な行動がどんどん抑制されていく時代の中にありました。その結果、テレビからも自由でやんちゃな雰囲気はなくなり、個性のない、どこも似たような番組が大量に作られ、視聴者からはマンネリだと揶揄されるようになりました。

 みんな口では「自由で大胆な発想を」と言いつつ、実際に求めているのは、安く大量に、そして誰でも簡単に作れるモノなのです。

 僕は思うのです。「発想」って別に特別なことなんかじゃなく、誰にでもあるものだと。誰だって「こうした方がもっとよくなるんじゃないか」「おもしろくなるんじゃないか」という考えは持っています。

 でも、そんな新しい考えを口にした途端、だいたいが「そりゃわかるけどさ」という「けど」口調と「でもこういう場合はどうするんだ?」という「でも」口調の前に、どんどん気持ちが萎えて、結局落ち着く先はどっかで見たことあるようなありきたりのモノ。

 会社の中枢に数多く存在する「けどでも人間」を納得させるには、他社の成功例を引き合いに出して「アソコが出来たんだからウチも出来るでしょう」と言うのが一番効果的です。

 他社が出来たことに「でも」と言えば、それは弱気だと思われますから「じゃあやってみろ」と言うしかないんです。でもそれをやったところで結局、他社と似通ったことをやるだけのマンネリ化が業界全体に蔓延し、あとはコストで勝つしかないという泥沼に陥っていくだけのことです。いろんな業界でこの悪循環が繰り返されてきました。

 先に言ったように「発想」なんて誰にでもあるものです。でもその発想をカタチにできないだけです。だから大事なのは発想する力ではなく、それをカタチにする術ということになります。

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン