大切な得意先の担当者が交替したと聞き、先方に挨拶に向かったAさん。出された名刺の名前は「上村太郎」だった。どんな人かを探るためにいろいろと質問したまではよかったが、どうも途中から「上村さん」はなぜか不機嫌そうな表情を浮かべ続ける……。そして別れ際の「上村さん」の一言にAさんは青ざめた。「私はウエムラではなくて、カミムラなんですよ……」
ここでクイズ。日本の名字の読み方で、多いのはどっちでしょう。
【1】上村(うえむら/かみむら)
【2】東(ひがし/あずま)
【3】土橋(どばし/つちはし)
【4】河野(こうの/かわの)
【5】長田(おさだ/ながた)
【6】千田(ちだ/せんだ)
【7】久野(くの/ひさの)
【8】小口(おぐち/こぐち)
【9】田上(たのうえ/たがみ)
【10】古谷(ふるや/ふるたに)
すべて左の読み方が多数派となる。以下、解説。
【1】東日本では「かみむら」、西日本では「うえむら」が多く、全国では若干「うえむら」が多い。【2】「ひがし」は近畿以東で、「あずま」は中国以西。全国的には6対4。【3】東日本では「どばし」、西日本では「つちはし」。全国的には「どばし」がやや多い。
【4】全国的に分布はバラバラだが、「こうの」が約53%、「かわの」が約47%と僅差。【5】全国で3分の2が「おさだ」で、山梨では99%が「おさだ」。「ながた」は西日本に多い。【6】東北以北では「ちだ」、北陸以西では「せんだ」。全国では「ちだ」が7割以上。
【7】「くの」が主流。九州北部・山口では「ひさの」が多い。【8】長野と北関東に集中しており、長野が「おぐち」で北関東が「こぐち」。全国では3分の2で「おぐち」。【9】熊本を中心に九州南部は「たのうえ」、他地域は「たがみ」が多い。全国では「たのうえ」が6割弱。【10】全国的には7割で「ふるや」。「ふるたに」は中国地方に多い。
●協力/森岡浩(姓氏研究家)
※週刊ポスト2014年1月17日号