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りそな銀行のパート女性 TDRに1人で通いディズニー流接客学ぶ

 年に何度も東京ディズニーリゾートに行くというディズニーファンでも、ひとりで出かけるという人はそれほど多くはないだろう。しかし、伊藤友希江さん(48才)は、暇を見てはひとりで遊びに出かけていたという。

 伊藤さんの仕事は、りそな銀行地域サポート部店頭フロントアドバイザー。担当する地域の支店を回りながら、接客のアドバイスをしている。その目配り、気配りの細やかさは高く評価されていて、各支店からは来訪を心待ちにされている。上司に当たる地域サポート部グループリーダーの市原清春さんはこう太鼓判を押す。

「伊藤さんは、なくてはならない銀行の顔。担当している支店からは常に引っ張りだこの状態です」

 銀行の顔──と言われるほどの仕事ぶりを見せる伊藤さんは、実は正社員ではない。りそなではパートナー社員と呼ばれる歴としたパート。夫と大学生の息子、高校生の娘と4人での暮らしを守りながら、昼間の時間を仕事にあてている。具体的には、どんな仕事をしているのか。

「銀行にいらっしゃったかたがどういうご希望をお持ちなのか、それを把握して、そのかたに合ったサービスを提案する、そんな仕事です」(市原さん)

 そう、銀行に行くと、行員から「今日はどうされましたか?」と、話しかけられた経験が誰しもあるだろう。あれが伊藤さんの仕事。そのロビー係からパートを始めた。

「簡単そうに見えて、なかなかうまくできる人がいないんです。ところが、伊藤さんがいると、お客さまから『あの人が勧めてくれたので』というような声を多く聞くようになりました」(前出・市原さん)

 顧客のニーズを掴み、押しつけがましくせずに、柔らかく、サービスを提案する。その手法を伊藤さんはどこで学んだのか。その答えが、東京ディズニーリゾートだった。

 仕事が終わったら、18時から使える『アフター6パスポート』を使って、1時間ほど遊び、家に帰って主婦に戻る。そうやって遊びながら、ディズニー流の接客を学んでいた。伊藤さんが言う。

「みなさん、本当に私たちに喜んでもらえるようにって、おもてなししてくださるじゃないですか。ひとりで行くと、乗り物にもひとりで、それも繰り返して乗りますが、2度目には『お帰りなさい』って。私もそういう人になりたいなと思いました」

 そう思ってからの伊藤さんは、ディズニー流をどうやって銀行に取り込むかを考えた。その小さなアイディアが、彼女を店頭フロントアドバイザーという仕事に就かせる原点だったのだ。

 そもそも、伊藤さんが出産後に銀行で働こうと思ったのは、結婚前の職場が信用金庫だったから。6年のブランクがあり、慣れた仕事をしたかったのだ。きっかけは、実家でたまたま開いた新聞に載っていた銀行の求人広告だった。

「何気なく見ていたら、勤務時間は9時から15時半で、仕事内容は『ロビー担当。金融案内と誘導』って書いてありました。しかも、家から近いので、これならできるかも、と思ったんです」(伊藤さん)

「アイデム 人と仕事研究所」が2012年10月から2013年9月までに集計した「受付・案内事務員」の平均時給を見ると、平均値が911円(東京都市部)。女性セブンが複数の求人情報を調べたところ、銀行ではもう少し時給が高かった。

 りそな銀行人材サービス部によれば、パートナー社員は、基本的に社員と同じ基準で人事評価や昇給をして、基本給は同じ仕事をしている社員と時給換算で同額にしているとのこと。

 ただし、当時の伊藤さんは1才児を抱える身。働くのは無理かもしれないと思う半面、これを逃すと、こんなにいい求人にはもう出合えないかもしれない…と思った。

「それで、母親に『働いてもいい?』と聞いたら、二つ返事で『うん、いいわよ』と」(伊藤さん)

 快諾した母は、実は伊藤さんが面接に受かると思っていなかった。ここで賛成しようがしまいが、赤ん坊がいるのだから銀行は断るだろうと思っていたのだ。

 伊藤さんは案の定、面接で「下のお子さんが小さいですよね」と聞かれた。その時、伊藤さんの口をついて出たのが、「母親に頼み込んで、面倒を見てもらいますから」というセリフ。熱意で面接を乗り切った。

※女性セブン2014年1月23日号

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