一方、今回の榊原氏の起用は「次の次の会長ポストを見据えた人事」と見る向きもある。
「今後の経団連は2020年の東京オリンピックに向けて、ヒトとカネを投入して存在感を見せつけられる絶好のチャンス。そこで頼りになるのが業績のいいトヨタ自動車です。豊田章男社長もオリンピックにかける意気込みは相当で、経団連の『スポーツ推進委員会』の初代委員長に就任したくらい。
つまり、経済界では2020年時の経団連会長は章男氏が相応しいというのが既定路線で、今回の人事はトヨタに財界総理の座をどうバトンタッチするかというリリーフの役目が重要になる。幸い、東レはトヨタのお得意先であり両社の関係も良好ですから、榊原氏は章男氏の“道先案内人”としてはもってこいだと思います」(前出・福田氏)
いずれにせよ、失われつつある経団連の存在意義を取り戻すことは喫緊の課題。前出の関氏はこんな苦言も呈す。
「アベノミクス第3の矢もどうなるか見えない中、経済界としては法人税減税や解雇規制の緩和など政府に訴えたい問題は山積しています。また、口を出すためにはオリンピックのみならず政界への企業・団体献金の復活といった資金集めの能力も問われています。新会長にはそうした取りまとめの重責がのしかかってくると覚悟しなければなりません」
果たして財界の総本山、経団連は復権できるのか。榊原氏の双肩にかかっている。