ビジネス

なり手のいない財界総理に東レ榊原会長が異例抜擢された事情

“財界総理”と呼ばれる日本経済団体連合会(経団連)の次期会長人事が波紋を呼んでいる。

 これまで経団連会長は、現役の副会長など要職から選ぶのが慣習だったが、内定したのは元副会長の榊原定征氏(東レ会長)だったからである。なぜ異例ともいえるOBからの選出になったのか。経済ジャーナリストの福田俊之氏がいう。

「要するに『なり手がいなかった』ということ。かつての経団連といえば、会員企業の意思をまとめ、政府与党に対する発言力も持つ圧力団体として機能していましたが、近年はそうした存在感はすっかり薄れ、会長に自ら立候補するような経営者もいなくなりました」

 政治に対する影響力の低下は、現会長の米倉弘昌氏(住友化学会長)と安倍首相の不和で、より決定的になってしまった。一昨年の総裁選直後に会談した2人。安倍氏は米倉氏からアジア外交について非難され、「あなたに何が分かるんですか!」と机を叩きながら憤慨したというエピソードは有名である。

 それ以降、安倍政権下で米倉氏は経団連の「指定席」といわれる経済財政諮問会議や産業競争力会議のメンバーにもなれず、すっかり蚊帳の外に置かれてしまった。任期途中での交代も囁かれた中、再び政権との距離を縮めるという大役をすすんで引き受ける後継者が育たなかったのも当然である。

「米倉氏は後任に日立製作所の川村隆会長を本命として昨年から口説いていたが、固辞され続け、ついに1月8日に日立の人事に絡んで財界活動からの引退を宣言されてしまった。

 その他、有力候補とされてきた三菱重工業の大宮英明会長や三菱商事の小島順彦会長は、財界内の旧三菱財閥企業へのアレルギーが強く調整が難航。東芝の佐々木則夫副会長も自社の人事軋轢が報じられて脱落した」(全国紙経済部記者)

 こうして米倉氏が思い描いていた、経団連副会長からの候補者は誰もいなくなってしまったのである。では、東レの榊原氏に白羽の矢が立ったのはなぜか。経済誌『月刊BOSS』編集長の関慎夫氏が推測する。

「榊原氏は政府の産業競争力会議のメンバーとして政権に近いことはもちろん、もともと東レは名誉会長だった前田勝之助氏の時代から財界活動には熱心で、その流れを受け継いだ榊原氏が経団連の要職を歩いてきた過去も評価されたのでしょう。

 これまで榊原氏は常に自社の天皇だった前田氏の顔を立てて、自由な発言や活動がしづらかったのですが、昨年、前田氏が亡くなったことで、そうした遠慮もなくなった。思わぬ形で経団連会長のポストが回ってきたことで、繊維産業の環境事業なども存分にアピールできると考えているのかもしれません」

関連記事

トピックス

違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
1泊2日の日程で石川県七尾市と志賀町をご訪問(2025年5月19日、撮影/JMPA)
《1泊2日で石川県へ》愛子さま、被災地ご訪問はパンツルック 「ホワイト」と「ブラック」の使い分けで見せた2つの大人コーデ
NEWSポストセブン
男が立てこもっていたアパート
《船橋立てこもり》「長い髪に無精ヒゲの男が…」事件現場アパートに住む住人が語った“緊迫の瞬間”「すぐ家から出て!」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
江夏豊氏が認める歴代阪神の名投手は誰か
江夏豊氏が選出する「歴代阪神の名投手10人」 レジェンドから個性派まで…甲子園のヤジに潰されなかった“なにくそという気概”を持った男たち
週刊ポスト
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン