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江本孟紀氏が降板事件を述懐「阪神ベンチがアホでよかった」

 1981年8月26日、3点のリードを同点にされ降板した阪神・江本孟紀は、采配に納得せず「ベンチがアホやから野球がでけへん」と発言。これがもとでユニフォームを脱いだ。
 
 その試合で先発の江本は好投したものの、8回にヤクルト打線につかまり1点差に追い上げられ、なおも2死二塁のピンチ。普通なら8番の次打者は敬遠のケースだった。

「指示を待つため、内野もマウンドに集まってベンチを見るんだけど、中西(太)監督の姿がない。あの人は肝心な時に逃げるという評判があったけど、その通りいなくなったんです。

 仕方ないから様子を見るため外角に外して投げたら、球に打者が飛びついて当ててきた。敬遠だと高をくくって腕組みしとったレフトに飛んで、同点ですわ」

 江本は降板を言い渡されて激昂。ロッカーへ下がる際に「何を考えとるんや、アホか」と独り言をいったのを記者に聞かれ、それが翌日の新聞の見出しに躍った。

「球団は10日間の謹慎だという。向こうが悪いのに謹慎はできないので、“辞めますわ、任意引退にしてください”といったんです。そしたら『任意引退』と書かれた小さな紙切れを持ってこられてね。三文判を押して、ハイお世話になりました、でサヨウナラですわ」

 しかし事情を知らない阪神ファンが「ベンチがアホ」発言に激怒。江本氏は身を隠すように千葉へ移住した。

「翌年ヤケクソで書いた暴露本『プロ野球を10倍楽しく見る方法』がベストセラーになったのが、評論家としての地位を作ってくれた。阪神のベンチがアホでよかったと思っていますよ」

 江本氏は怒りのあまり球場から“直帰”してロッカーにも足を向けなかったので、野球道具はすべて甲子園に置き去りだった。そのほとんどの所在が不明になっていたが、最後に使っていたグラブだけが出てきた。

「降板するとき怒ってスタンドに投げ込んだんです。そうしたらそのグラブが後日、『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)に出てきたんで笑いましたわ」

 鑑定の結果はなんと60万円! しかし、鑑定人には、

「“水島新司さんが描いた似顔絵があるからで、本来は価値がない”っていわれました(笑い)。失礼な話でしょう」

 発見された“アホの記念碑”は、バカバカしい値段にしかならなかった。

※週刊ポスト2014年1月17日号

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