夫が働き、妻は家を守る。徐々にだが、そういう形が当たり前ではなくなってきている。たとえば、「別居」や「離婚」ではなく、「卒婚」なのだ。2004年時点で8組の“卒婚カップル”を取材している、『卒婚のススメ』(オレンジページ刊)の著者・杉山由美子さんは、こう話す。
「いわゆる固定観念としての結婚観が消えず、定年した夫が妻にまとわりつく“濡れ落ち葉族”も一時話題になりました。夫の面倒は妻が見るという常識は、そろそろ変えていく必要があるのでは。
長生きはもちろん素晴らしいですが、家事が何ひとつできない夫の人生が90年あったら…と恐怖さえ感じます。
だからこそ夫婦の後半生は次のステップが必要。ある程度の節目を迎えたら、互いに好きなことをやるという人生にシフトして、自分の行きたいところに行って、その経験談を夫や妻に話す。そんな生活は素直に楽しいと思います」
これまでの結婚の形態ではどちらかが我慢する結果になりがちだが、互いに無理せず、心身ともに独立していくのが、これからの夫婦の鉄則になるべきだと杉山さんは提唱する。
自営業の高田圭子さん(仮名・59才)も卒婚を実践しているひとりだ。
「卒婚なんて大それたことをしようとしたんじゃないんです。2年前に東北で小さな酒蔵を守っていた私の母親が、要介護状態になったんですよ。で、一人娘の私が実家に帰っている時間が長くなって、去年の夏から私の居場所がこっちになっちゃったって話。
最初は家事や夫(61才)の世話が心配だったんだけど、無職の長女(34才)が“家事は私が担当する”って急にやる気になって(笑い)。娘が夫の収入を管理して、私にも毎月一定額をくれます。夫とも娘とも、よく電話で話していますよ」(高田さん)
戸籍はそのままだが、今年は圭子さんの住民票は実家に移す予定だという。夫婦間の問題に詳しいエッセイストの川北義則さんは、こう説明する。
「今までの結婚の概念は夫が仕事し、妻が家を支えるというものでしたが、共働き世帯が増え、夫婦の形に大きな変化が生じていると思います。また個人の秘密が守れる携帯電話やスマホの普及も多様化の一因でしょう」(川北さん)
世の中が進化していくなかで、結婚に関しては保守的になりがちな日本人。しかし実際は、それが単なる“外面”であることも多い。古い考え方やしきたりにとらわれない、卒婚という夫婦の新しいカタチに思いを馳せてみるのもいいかも!?
※女性セブン2014年2月6日号