――すでに十分トラブルまみれなのに、まだ起きるんですね。
井上:私の仕事用コンピュータは安全性を高めるために二つのHDDを繋げてデータをミラーリング、同一の内容を二つのHDDに記録するようにしています。その片方が壊れて、今は一つしかHDDが動いていません。幸い、データは複数の場所にコピーしているので、HDDが壊れてもすべてのデータがいきなり消滅することはないのですが、ミラーリングしておいてよかった。このトラブルは、担当編集さんにも今日まで話していませんでした(笑)。
――交換用のHDDも香港へ買いに行くのでしょうか?
井上:こんなこともあろうかと予備HDDはすでに用意してあるんです。中国の家へもどってから交換作業をします。ちゃんと用意しているあたり、我ながら大したもんですよ(笑)。常にチャイナリスクがあると思って備えています。PC関連に関しては、中国のものを何も信じていません。
――中国での生活は、予想しないことと備えることの追いかけっこのようですね。
井上:この間は、自分の仕事部屋の電気をつけようとしたら、すべての電源がつかなくなったんです。わけがわからなくて電気屋を呼んだら「明日、修理に来るまで二度とこのスイッチを入れるな。もし入れたら、このフロア全部が停電する」と言われました。ひとつの部屋のスイッチを押すだけで全体が止まる、同じマンションの電気が止まるというんです(笑)。
おそらく配線そのものがおかしいはずなのに、ちゃんと修理してないんですよ。新しい装置を設置しただけで、電気配線の構造はそのままだと思います。その装置が壊れたら、また仕事部屋の電気のスイッチを入れるとマンションのフロア全体が停電するんです。とても面白い(笑)。
――ずいぶん雑な対処方法ですが、中国でのお住まいは高級マンションなんですよね?
井上:工場が多い地域なのですが、その経営者が多く住んでいるマンションで、実際に金持ちが多いですね。でも、そんなの関係ないです(笑)。中国の住宅事情を考えると、まだまともな方ですよ。
■井上純一(いのうえじゅんいち)1970年生まれ。宮崎県出身。漫画家、イラストレーター、ゲームデザイナー、株式会社銀十字社代表取締役社長。多摩美術大学中退。40歳で結婚した20代の中国人妻・月(ゆえ)との日常を描いた人気ブログ『中国嫁日記』を書籍化しシリーズで累計65万部を超えるベストセラーに。2012年4月から広東省東莞市在住。著書に『月とにほんご 中国嫁日本語学校日記』(監修・矢澤真人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス)など。最新刊は『中国嫁日記』3巻(KADOKAWA エンターブレイン)。