安倍首相は4月に安保法制懇談会に答申を出させ、与党内の合意を取り付けた上で、終戦記念日(8月15日)の前に解釈改憲を閣議決定するスケジュールを考えていた。だが、小松長官の続投が決まると、「体調を考えて、総理は日程を大幅に繰り上げた。憲法記念日(5月3日)の前に閣議決定を行ないたいようです」(官邸スタッフ)と急ぎ始めたのだ。
この逸話が永田町では“涙なしでは語れない友情の美談”として語られているが、美談や感傷で拙速に憲法解釈を変更されては国民はたまらない。第一、内閣法制局長官は首相の法律顧問ではあっても、憲法解釈を最終的に決める権限を与えられているわけではない。
小松長官の体調も必ずしも深刻なものとは限らない。日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之教授が語る。
「腹腔の腫瘍だと発表されているなら一番多いのは消化器のがんで、胃がんでしょう。手術ができなかったとすれば、進行がんが考えられますが、進行がんイコール末期がんではない。通院治療を続けながら仕事することは可能です」
こう見てくると、小松氏の末期がん説や美談仕立ての友情物語そのものが解釈改憲を急ぐための“演出”ではないかと怪しく思えてくるのである。
※週刊ポスト2014年3月14日号