地元客も顔を曇らせる。
「この辺の店は地元の常連が多いんだ。東(双葉郡)の人たちが避難してきてから、早い時間から混んでるし騒がしいから、われわれ常連も店に行かない時期があったよ」(50代の男性客)
居合わせた40代の常連客が、こう口調を合わせた。
「競輪で儲けたとか言って、わざわざ札びらを見せるヤツもいるんだ。『原発(事故)で帰れねぇけど、たまにはいい思いしないとな』って言うから、避難してきたヤツだって分かったんだけどね。店中が嫌な雰囲気になったよ。いわきの被災者なんか8万円しか貰ってないのに、あいつらたんまり賠償金もらってさ。おかしいだろ? 競輪やって酒飲んでタクシーで帰るんだよ」
東京電力は原発事故の賠償として、帰宅困難区域と居住制限区域の住民に「精神的損害」への慰謝料として1人あたり月々10万円を支払っている。4人家族であれば年収は480万円。これに、原発事故以前の所得を補償する「就労不能損害(東電は来年2月末で打ち切りの方針)」が加算される。一方のいわき市民に支払われた賠償金は1人当たり8万円(妊婦と18歳以下の者は40万円)だけだ。
※SAPIO2014年4月号