ただしカレー専門店の場合、既製品のルーを使って「家で作るのとあまり変わらない」と思われると集客は望めない。独自のスパイスづくりが商売を左右する。20種類程度のスパイスを調合して焙り、オリジナルの「カレー粉」を作っていく。食品業界に詳しいジャーナリスト・広尾晃氏はこう語る。
「スパイスには『辛み』『香り』『色』を出すといったそれぞれの役割がある。辛みを出すスパイスとしてはホワイトペッパーやカイエンペッパー、香りを持つスパイスとしてカレー特有の風味を出すクミンなど、色としてはカレーの黄色を出すターメリックやパプリカといった具合に役割が分かれます。それらをどうブレンドするか、焙煎の温度や時間をどう変えるかで店ごとの特色が出てきます」
その場合でもスパイスそのものの原価は一人前換算すれば10~20円程度だが、ブレンドや焙煎のノウハウを持つ人間や、カレー粉をバターや薄力粉と一緒に炒めてルーにする技術を持つ店員の人件費がかかる。
比較的手をかけているカレー専門店の一例では、ルー(スパイスや調味料)で約80円、具材(肉、野菜)で約80円、ライスが約50円で原価が200円を超える。1000円のカレーが珍しくない理由はこのあたりにある。
※SAPIO2014年4月号