基調講演を行なった順天堂大学医学部・小林弘幸教授
さらに小林教授は、“腸の老化”について次のように述べた。
「人間の体は、緊張したときに働く『交感神経』と、リラックス時に働く『副交感神経』がバランスよく働くことによってベストな状態に保たれています。腸は、副交感神経が優位なとき、つまりリラックスしたときに収縮して、便を送り出すのですが、この神経の働きは加齢とともに低下します。また年をとると腸内の善玉菌が減りますから、高齢者になるほど、便秘が増えると考えられます」
しかし、腸の働きが衰える原因は、老化だけではない。年齢に関わらず、その原因は、食物繊維の不足や高脂肪食といった食生活の乱れ、過労や睡眠不足などの不規則な生活、さまざまなストレスによって、腸がうまく働かないという人も多い。今回の「乳酸菌のアンチエイジング効果」についての研究成果を、小林教授はこう評価する。
「腸に対する避けがたいダメージ要因を抱えている現代人にとって、『乳酸菌に腸の炎症を抑制できる可能性がある』とわかったことは、健康長寿を目指す上で非常に有意義なことです。
腸が若々しく、正常に働けば栄養をしっかり吸収できるので、全身が健康になります。また、自律神経のバランスも整うため、心の健康を保つことにも繋がります。今後はこの乳酸菌で腸の蠕動(ぜんどう)運動を改善できるなど、新たな作用が解明されることに期待しています」(小林教授)