国内

福島第一原発 原発を渡り歩く熟練作業員消え未経験者が増加

「(福島第一原発は)コントロールされている」――安倍晋三首相が全世界に向けて宣言してから半年以上経ったが、今も高濃度汚染水の漏洩が続いている。政府は再稼働に向けて大きく舵を切ろうとしているが、廃炉作業はまだ始まったばかり。

 必死の作業が続く現場では今、作業員の確保、安全への意識の低下など、深刻な問題が起きていた。今回は特別編として、福島第一原発内部の取材をしたジャーナリスト・藤吉雅春氏が、その知られざる実情をリポートする。

 * * *
 確かに想像以上に厄介な仕事である。昼食をとるたびに重装備の防護服、手袋、靴下を脱ぎ、被曝線量を計測する長い列に並ばなければならない。また、昼食といっても、敷地内では温かい食事をとることはできないため、東電は敷地外に給食センターを建設する予定だ。しかし、食事を変えたところで人が増えるとは思えない。

 そして今、実は作業員の確保に大きな矛盾が生じている。2月、初歩的なミスが増えたため、東電とメーカー各社の間で協議が行われた。

「誰でもいいから作業員の頭数だけを揃えるという考えをやめよう」と決まり、作業員はすべて下請け会社の正社員に限定。社会保険に入っていることが作業員の必要条件となった。

 これが現場に異変を起こした。ベテラン技術者は深刻な表情でこう言う。

「震災前に福島第一原発に働きに来ていた熟練の作業員たちの姿がほとんど消えました。彼らは全国の原発を渡り歩く“原発ジプシー”など、日雇いで日給をもらうフリーの作業員です。しかし、新しい規則で会社の正社員にならなければならなくなると、社会保険などが天引きされるので、これまでの日給より手取りの賃金が安くなる。

 そこで彼らは原発の仕事を捨てて、政府が行っている帰宅困難地区の除染作業に仕事を変えたのです。これは危険手当が1日1万5000円出る。賃金と合わせると1日約2万円になるので、原発より地域の除染のほうが割がいいのです」

 かつて全作業員の5分の1は、こうしたフリーの技術者集団だった。彼らが消え、未経験者ばかりが増えていく。

「今後、廃炉に向けて技術を必要とする仕事が増えていく。だから、熟練の作業員がいなくなるのは、非常に頭が痛いんです」(前出・ベテラン技術者)

 誰もやりたがらない危険な原発作業は、今まで非正規雇用で成り立っていた。しかし、3つの原子炉が同時にメルトダウンするという世界初の惨事を経験したのに、これまで頼りにしてきた熟練たちが減っている。このことは、廃炉までのロードマップを根底から揺るがす問題だ。

 ロボットを使った遠隔操作の研究が進められているが、実現化されたとしても、人間による作業がなくなるわけではない。

「初歩的なミスが起きるたびに、作業がストップして、手間が増える。結局、先に作業が進まないんです」

 ベテラン技術者の言葉を聞けば聞くほど、原発の現場が深刻な状態にあることを思い知らされるのだ。

※女性セブン2014年4月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

年金改正法に仕込まれていた「厚生年金の減額継続」年金カット額をシミュレーション 「20年で200万円減」基礎年金もカットなら減額は1.5倍に
年金改正法に仕込まれていた「厚生年金の減額継続」年金カット額をシミュレーション 「20年で200万円減」基礎年金もカットなら減額は1.5倍に
マネーポストWEB
無期限の活動休止を発表した国分太一
「給料もらってるんだからさ〜」国分太一、若手スタッフが気遣った“良かれと思って”発言 副社長としては「即レス・フッ軽」で業界関係者から高評価
NEWSポストセブン
【動画】大谷翔平 試合中に美容液 1本1万7000円
【動画】大谷翔平 試合中に美容液 1本1万7000円
NEWSポストセブン
阿部智里氏が新作について語る(撮影/国府田利光)
阿部智里氏『皇后の碧』インタビュー「夢の世界に見せて相当シビアなことを書くファンタジーには現実を問い直す力がある」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「給料もらっているんだからさ〜」国分太一、若手スタッフが気遣った“良かれと思って”発言 副社長としては「即レス・フッ軽」で業界関係者から高評価
NEWSポストセブン
”アナウンサーらしくないアナウンサー“と評判
「笑顔でピッタリ腕を絡ませて…」元NMB48アイドルアナ・瀧山あかねと「BreakingDown」エース・細川一颯の“腕組み同棲愛”《直撃に「まさしくタイプです(笑)」》
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《TOKIO・国分太一が無期限活動休止》「演者とスタッフは“独特の距離感”だった」関係者が明かす『鉄腕DASH』現場の“特殊な事情”
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《スタッフに写真おねだりか》TOKIO・国分太一は「コンプライアンス上の問題行為が複数あった」…日本テレビに問い合わせた結果
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
《日テレで緊急会見の意味は》TOKIO国分太一がコンプラ違反で活動休止へ 「番組降板」「副社長自らスキャンダル」の衝撃
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、今年秋の園遊会に“最速デビュー”の可能性 紀子さまの「露出を増やしたい」との思いも影響か
女性セブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《美女モデルと不倫》妻・観月あこに「ブラックカード」を渡していた錦織圭が見せた“倹約不倫デート”「3000円のユニクロスウェットを着て駅前チェーン喫茶店で逢瀬」
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン