スポーツ

山田久志「開幕戦第1球をいきなり打つ礼儀知らずが増えた」

 今年はプロ野球が生まれて80周年の記念すべき年。記念の年でなくとも、開幕投手をつとめるというのは特別な意味を持つ。阪急で開幕投手を12年連続で務めた山田久志氏は、何に道も前から孤独と禁欲を貫き、気持ちを昂らせ、必ず初球は気持ちをぶつけるど真ん中のストレートを投げた。

「彼は毎年その第1球を見て、“俺もまだまだやれる”ということを確認していた。どんな大投手でも、開幕では極度の緊張にあるため、何か安心を求めるのです。それが、最近は第1球をいきなり打ってくる礼儀知らずな若い連中が増えた、と山田氏が嘆いていたことがあります(笑い)」(スポーツライターの永谷脩氏)

 これは投手にとって、本当に嫌なものだという。同じく阪急のエースとして活躍し、350勝を達成した米田哲也氏が語る。

「一番腹が立つのは、審判が“プレーボール!”と手を挙げ、サイレンが鳴っている間にポンとヒットを打たれること。高倉さん(照幸・西鉄)にはよう打たれました。僕は投げるのが早いから印象に残りやすいんですわ。頭に来て、高倉さん相手の時は、サイレンが鳴り終わるまで投げませんでしたよ(笑い)。大映の坂本さん(文次郎)も初球が好きでしたね。こういう相手が多かったからか、僕は初球はボールから入ることが多かったかな」

 最悪なケースはもちろんホームランだ。プライドをズタズタに打ち砕かれたのは、開幕戦9勝の日本記録保持者、近鉄の大エース鈴木啓示氏。

「引退した1985年の、西武との開幕戦。先頭の石毛(宏典)にホームランを打たれたんですわ。もう引退前で、蝶々が止まるようなヨレヨレの球でしたが、やっぱり大ショック。石毛には2打席目にもホームランを打たれてノックアウト。引退の2文字が脳裏をかすめたのはこの時です」

 ちなみに1本目は初球ではなく、2-2からの一発。それでも大エースに引導を渡すことになったわけだ。仮に1球目に打たれたとすると、そのインパクトは計り知れない。

 開幕戦、第1球目がホームランになったケースは、プロ野球史上4回ある。山田氏の言葉を借りるなら、開幕戦の第1球は、たとえ打ち頃の絶好球でも見逃すのが投手からすれば“礼儀”だが、打者の見方はどうだろう。1970年の開幕戦で、初回、初球を先頭打者ホームランした記録を持つ山崎裕之氏(ロッテ)はこう語る。

「相手投手の西岡(三四郎・南海)さんは、ストレートとスライダーと球種が少なかったので、前の晩からストレートなら少々ボール球でも初球から狙おうと考えていました。それでたまたま、ストレートが真ん中高めに来たので、振り抜いたらホームランになった。

 当時は予告先発などないが、開幕戦はエースが投げるので予想はしやすかった。大体がエースなので、過去の対戦データから攻略法も立てられるから、皆やっていたんじゃないかと思う」

※週刊ポスト2014年4月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン