卓越した技術で短時間にクルマのカタチを造り上げていく助川さん(左)と森脇さん(右)
現在マツダが目指しているデザインテーマ『魂動(こどう)』は、動物や自然が持つ肉体美からインスピレーションを得て、生き物の一瞬一瞬の躍動感を表現している。そこでキーとなる面の表情や陰影、緊張感は、粘土ならではの柔らかさや固まった後の硬さ、シャープな削り出しでこそ表せるのだという。
その『魂動』から生まれた車種は、日本国内を上回る高い評価を国際的に獲得。世界25か国のジャーナリストによって選ばれるワールド・カー・アワードのデザイン部門で、2013年はジャガー、アストンマーチンに次いで、マツダ『アテンザ』が、2014年は現時点でBMW、メルセデスベンツと共に、マツダ『アクセラ』がベスト3に選出されており、4月17日にニューヨークモーターショーで最終結果が発表される予定だ。
そこで記者も実際に、クレイモデル造りを体験してみることに。1/1サイズのクレイモデルのボンネットに粘土を載せ、伸ばし、削ってみる。初めは柔らかい粘土だがクレイモデラーのように薄く伸ばすのは至難の業、固まってから削る作業も、全く思い通りにはできない。悪戦苦闘した揚句に、凸凹にしてしまったクレイモデルを助川さんと、同じくクレイモデラーの森脇由香さんの2人は、わずか1分ほどですっかり元通りに修復してしまった。
「『魂動』のコンセプトを聞いても初めは何をしていいかわからなかったんですが、1台のクルマを大きな塊と考えて、骨格や面の緊張感、光をイメージしていく中で、やるべきことがはっきりとしていきました。この仕事を選んだのは、クルマ好きの父から受け継いだクルマへの想いと、手作りが好きだったこと。手を出さないように気をつけていますが、子供の夏休みの宿題には、ものすごく厳しい母親です(笑い)」(森脇さん)