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中国 今後10~15年で共産党一党独裁が崩壊と米研究者が予測

 中国で今後一層、経済発展が進み、国民1人当たり平均年収が6000ドル(約60万円)に達すれば、国民が民主化を求める傾向が抑えきれなくなり、このため、中国共産党の一党独裁体制は今後10~15年で崩壊する可能性が高い──との予測を著名な中国問題専門家が唱えており、波紋を広げている。米政府が運営する国営放送「ボイス・オブ・アメリカ」が伝えた。

 この予測は米クレアモント・マッケナ大学のミンシン・ペイ(裴敏新)国際戦略研究所所長(教授)によるもの。

 ペイ氏はこれまでの軍や一党による独裁などの全体主義国家の崩壊の例を研究し、平均年収が1000ドルを超えると、全体主義体制は不安定になり、4000ドルでは民主主義社会への移行はほとんど不可避となる「民主過渡期」に入ると指摘。6000ドルに達すると、もはや一党独裁体制や軍政は継続するのが困難になるという。

 中国国家統計局は今年2月、農村部と都市部の住民を合わせた全国民の年間平均可処分所得は前年比10.9%増の1万8311元(約30万7000円)だったと発表。中国では平均年収が4000ドルのレベルに近づいており、すでに過渡期に入りつつあるとみられる。

 ペイ氏は都市部の平均年収は4万6769元(約75万円)と、前年比で11.9%上昇しており、すでに「一党独裁崩壊期」の60万円を上回っていることから、都市部の中間層は独裁体制に耐えきれない「民主過渡期に入っている」と分析。

 今後10~15年間で、中国の1人当たり平均年収は1万5000ドルを超え、都市化の影響で都市部住民の人口が全体の60~65%を占めることが予想されることから、ペイ氏は「この時点で、中国共産党政権が一党独裁体制を維持するのは極めて困難になる」と指摘する。

 これに対して、アンドリュー・ネーザン米コロンビア大学教授は「中国の都市部の中間層は政府に対して、効率的な社会福祉を要求しており、社会が不安定になることを望んでいない。彼らと共産党政権との立場は一致している」とペイ氏の民主化移行説に懐疑的だ。

 ペイ氏はこれに対して、「民主化といっても、中国が移行するであろう民主化社会は西側の民主化を意味しない。どちらかといえば、マレーシアのような多民族国家を維持するための、限定された民主主義体制のような形態になるだろう」と分析している。

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