「非常識な患者」を意味するモンスターペイシェントという言葉は、いまでは一般的な言葉として認知されているが、“プチ”モンスターペイシェントとでも形容したくなる身勝手な患者が増えている。特に、こういった予備軍は、夜間の救急診療時間に多いのだとか。
「救急時間というのは、あくまで緊急性があるということが大前提なんです。ところが、それを理解していない患者さんが非常に多い。もちろん、救急車が到着している場合などは、長時間待っていただくこともあります。医師含めスタッフも限られた人数で診療しますから、ときには『うちの病院は現在○○科は一切診られません」という信号を消防庁に送っています。しかし、そんなことはお構いなしで「なんで診られないんだ」「代わりの病院を探してくれ」と不機嫌にカラんでくる人もいます』
あきれるばかり、といった表情で夜間スタッフのYさんは話す。救急だからこそ、限られた科目と人数で診察している。事前に電話で確認してくるのが当たり前なのだが、まるでコンビニに来るような感覚で直接来院する人が、あとを経たないという。
「話を伺ってみると、まったく緊急性がない人も多数いますよ。『ちょっと熱っぽいので不安だから明日旅行に行く前に薬がほしい」『体がすこしだるいので点滴を打ってほしい」なんてのはよくありますね。あまりに自分勝手な都合が多いので辟易します。そういう人に限って、診察後に何も言わずに帰る人ばかり。お礼を言ってほしいわけじゃないですが、おじいちゃんやおばあちゃんが、『お世話になりました」と深々と頭を下げていく一方で、何も言わずに帰る患者を見ると心証はよくないですよ」(Yさん)
緊急性がないからこそ、感謝の気持ちもないのだろうか。緊急性があろうとなかろうが、多くのスタッフを働かせた意識がないというのは、なるほどモンスターペイシェントの予備軍かもしれない。
「これもよく巷で言われていますが、本当に救急車をタクシー代わりで使う人が多い。この前などは、事前に電話をかけてきて、『救急車を呼ぶのとタクシーで向かうのとどっちが安いんですか? 安いほうで今から向かおうと思いますんで…」ってふざけたことを言う男性がいたので、『緊急性があるかないかで決めてください。お金の問題ではありません」と電話口で軽く説教してしまいました(笑)。あまりに常識や礼節がない人が増えていて、この国は大丈夫なんでしょうかね」(Yさん)