球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
後半戦を見据えて、ドジャース・大谷翔平(31)は投手としてどう進化しているのか──。オールスター前の最後の登板となった7月12日(現地時間)のジャイアンツ戦。6月12日のパドレス戦で1イニング28球を投げて以来、前半戦では5試合に登板した。今回は3イニング36球まで登板イニング数と球数を伸ばしたが、そこには「決め球」への変化が見えた。スポーツ紙デスクが言う。
「投手復帰後の初登板では4球種(28球)を投じ、とりわけ注目されたのはこれまであまり投げてこなかったシンカーが約3割を占めたこと。その後の登板ではスライダーと“伝家の宝刀”とされたスイーパーを決め球にしようとしているように見える球種構成だった。
一方、今回の5回目の登板では11人の打者に36球を投じ、スライダー3球、スイーパー5球、ツーシーム1球、カットボール4球で、目立ったのはストレートが23球もあったこと。直球の割合が63.9%を占めた。50%を超えたのは投手復帰後初めてで、明らかに球種の構成が違った」
この日は最速99.9マイル(160.8キロ)を含め、立ち上がりから7球連続で直球を投げ、2者連続で高めの直球で空振り三振を奪った。その後も決め球として高めの直球を投げて三振や内野フライに打ち取っている。「2022年頃から大谷は横に大きく曲がるスイーパーを効果的に使っていたが、直球を中心に縦のスライダーなどを組み合わせる投球に変化したように見える」(前出・スポーツ紙デスク)のだ。
この「ストレートが決め球」という投球は“最強の進化”だと見る向きもある。現地ジャーナリストは「スイーパーなどの球種は腕が下がってヒジへの負担が大きく、球が抜けやすい一方、ストレートは上から叩くように投げるため肘への負担が少ないという指摘がある。これが決め球になる新しいスタイルが確立されれば、故障の懸念も少なくなるとの見方がある」と指摘する。
大谷の二刀流完全復活はファンの心待ちにするところだが、もうケガによる離脱もしてほしくない。その意味で理想的な進化を遂げているのか。データ分析に詳しいスポーツジャーナリスト・広尾晃氏が言う。
「復帰後5回目の登板での大谷の投球は23球のフォーシーム(直球)のうち、6球が2500回転を超えていた。高めの球が打者にはホップするように見え、それで抑えることができたのでしょう。フォーシームの指のかかりが素晴らしいということ。
ただ、メジャーではフォーシーム(直球)が決め球という投手はおらず、大谷もそうはならないでしょう。今はまだ投球の組み立てを試行錯誤している段階ではないか。肘への負担がかかる縦のスライダーも決め球にしたい様子が窺えます。そこにフォーシームをどう絡めていくかはこれからの課題でしょう」
二刀流完全復活を成し遂げた時、大谷はどのような投球スタイルになっているのか。
※週刊ポスト2025年8月1日号