国内

話題のアドラー心理学者 小保方晴子氏の涙に「思惑感じた」

自己中心的な子供が増えていると語る岸見氏。その理由は?

「承認欲求を持つな」「自己肯定するな」「子どもはほめても叱ってもダメ」――従来の常識を覆すようなアドラー心理学が、いま、多くの共感を呼んでいる。自己啓発の源流であり、D.カーネギーらに多大な影響を与えてきたアドラー思想の“今日性”とは何か。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問であり、アドラー思想を対話形式でまとめたベストセラー『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健 著/ダイヤモンド社)の著書である岸見一郎氏に、アドラーのエッセンスを聞いた。

* * *
――アドラーの教えには、一見、驚くようなものがあります。その一つが「普通であれ」です。競争の激しい今日、「個性的であれ」「特別であれ」と言われがちですが、なぜ「普通」なのでしょうか。

岸見:まず、普通であることは、無能であることではありません。アドラー心理学は「普通であることの勇気」を大切にしています。これはつまり「自分を受け入れる勇気」を持つことと同意です。普通であることを受け入れられず、「特別な存在」になろうとする人がいますが、そのために、自らの優越性を誇示することをアドラー心理学では否定します。

――しかし、優越性の追求のために努力するのは、悪いことではないように思います。

岸見:自分自身の優越性の追求、つまり、自分の成長のための努力はよいでしょう。勉強であれスポーツであれ、成果を出すためには一定の努力が必要になりますし、いまの自分よりも前に進もうとすることにはもちろん価値があります。しかし、他人との競争における優越性を追求してばかりいると、「結果」だけを求める人間になりがちです。

 そもそも人生は他人との競争でありません。健全な優越性の追求とは、他者の比較のなかで生まれるのではなく、「理想の自分」との比較から生まれるものなのです。

――では、他人に対して自分の優越性を示したがるような人にはどう対処したらよいのでしょうか。

岸見:アドラーははっきりと、「もしも自慢する人がいるとしたら、それは劣等感を感じているからにすぎない」と指摘しています。立場を利用した威嚇も同様です。部下と話すときに、ことさら声を荒げる上司がいたとします。その人は、怒りを使わないと人の優位に立てないと感じているから怒るのです。そういう上司に対しては、あぁこの人は自信がないんだなと受け止めて、「普通に話してくれませんか」と冷静に言えばよいのです。

――とはいえ感情は、突発的なものではないのでしょうか。

岸見:アドラー心理学は、人間は「目的」に沿って生きていると考える「目的論」をとっています。そして感情も、目的に沿って出し入れ可能な「道具」だと捉えます。例えばレストランで、ウエイターが客の上着にコーヒーをこぼしたとします。客はカッとなって大声でウエイターを怒鳴りつけた。この客の行動を、ミスを犯したウエイターを屈服させるという目的のために、その手段として怒りという感情をねつ造した、と考えるのです。

 昨今の出来事で言えば、STAP細胞問題において私は意見するような立場にはありませんが、一つ感じたのは、小保方晴子氏は会見で、涙を流さずに言うべきことを言う勇気をもってほしかったなということです。涙という感情に、アドラー心理学者としては、様々な思惑を感じてしまうからです。実際のところはわかりませんが、周囲もまた、感情的に評価してはいけないと思いますね。

 私はカウンセリングの際も、怒りであれ涙であれ、相手の感情には注目しないようにしています。泣いている人がいたら、泣かないで話ができるまで待つ。本来、言うべきことは言葉で言えるはずだからです。

関連キーワード

トピックス

【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」
日本上陸の内臓脂肪減少薬「アライ」 脂肪分解酵素の働きを抑制、摂取した脂肪の約25%が体内に吸収されず、代わりに体内の脂肪を消費
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
専修大サッカー部を辞任していた源平監督(アフロスポーツ)
《「障害者かと思った」と暴言か》専修大サッカー部監督がパワハラ・経理不正疑惑で辞任していた 大学は「警察に相談している」と回答
NEWSポストセブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
日本製鉄によるUSスチールの買収計画
【日本製鉄のUSスチール買収問題】バイデンもトランプも否定的だが「選挙中の発言に一喜一憂すべきではない」元経産官僚が読み解く
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン