「『ペプシネックス ゼロ』は話題になったCMを含めて、リニューアルが特に成功した事例と言えるでしょうね。プロモーションという点でも、リニューアルのメリットが挙げられます。例えば販売をする営業担当にとって小売店での販売スペースの確保といった営業活動に、新商品やリニューアル商品の発売は販売拡大の機会を生むでしょう。
また営業やプロモーションだけでなく、商品を進化させ続けるリニューアルには、開発やマーケティングを行なう人たちにとっても、具体的な目標を持って働くモチベーションにもなるはずです。こうして組織が動くリズムを作ることで、企業が活性化し、競争力を高めてブランドを維持する力にもなる。一方、消費者はニーズに応えた商品やより高機能化したサービスやアイテムによって、進化した商品を購入することが可能になるメリットがあります」(嶋口氏)
リニューアルを成功に導くため、企業は商品を新しくするだけでなく、会社の内側――マーケティング・開発・営業・宣伝など、多くの部署が複合的かつ有機的に機能するインナーサイクルを作り出すことも、大きなポイントのようだ。
車やPC・食品のような比較的速いサイクルのケースもあるが、長いスパンのリニューアルで進化してきた商品もある。今年39周年を迎え「キャンパスノート39(Thank you)イヤー」を展開している『キャンパスノート』は、1975年に発売してから4回のリニューアルを経て、2013年8月までに累計26億冊を販売。「ノートの進化を止めるな。」というブランド ステイトメントを掲げており、ブランドを維持するために必要なのは、“進化し続けること”だと感じさせる。
さまざまなメリットのあるリニューアルだが、企業にとっては取り組むべき課題もあると嶋口氏は指摘する。
「一定の市場規模を持っているブランドは新商品とは異なり、ある程度の“見込み”が計算できる上に、コスト効率が良い。そのため今後もリニューアルによって、企業や市場にリズムを作る流れは続くと思います。
しかし安易にやってしまうと、既存のブランドを損なう可能性もある。そこでこれから重要になるのは、適切にリニューアルを行なっていく『リニューアル マネジメント』だと考えています。スピードと鮮度を維持しながら、消費者のニーズに応えた商品を生み続ける――そういうマネジメント力が、成功する企業やブランドの大事なポイントでしょうね」