スマホ等のデジタル機器の隆盛により、昨今では裸の写真などをネタに交際相手をゆする「リベンジポルノ」が問題化している。一度世に出てしまえば、なかなか消し去ることの出来ない裸体画像の類だが、娘がAVに出演してしまった場合、親の権利で販売差し止めを求めるのは可能なのだろうか? 弁護士の竹下正己氏はこう回答している。
【質問】
18歳になる娘と大喧嘩。その際、娘は悔し紛れか私を苦しめたいのか、アダルトビデオに出演したと告白しました。調べてみると、本当に出演したようです。このままでは娘の将来に汚点が残る事態にもなりかねません。親の権利として、制作会社に作品の販売差し止めを求めることは可能でしょうか。
【回答】
お嬢さんはアダルトビデオに実演家として出演したことになります。実演家の演技の録画はその承諾が必要で、録画の承諾があれば、制作会社はビデオを複製し販売できます。出演や録画の承諾は、お嬢さんと制作会社とが締結した出演契約によりなされています。この契約の効力を奪うことが必要です。
ところで、お嬢さんは18歳で未成年者です。民法上、未成年者は、法律行為をするために必要な能力(行為能力)が完全ではない制限行為能力者です。そのため、未成年者が契約するときには、法定代理人の同意が必要になり、同意がない取引を取り消すことができます。
ただし、一定目的の財産処分を承諾した場合のその目的内の行為で、営業を認めており、その営業範囲内の行為は例外です。お嬢さんのアダルトビデオ出演は、その例外ではありません。よって出演契約を取り消せます。
ただ、問題があります。お嬢さんが制作会社に対し、成人していると嘘をついた場合です。民法では「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない」と定めているからです。特にお嬢さんが誤解を招くようなことをしていなければ、詐術には当たりません。
こうした例外に当たらない場合、あなたは親権者として、制作会社に対し、お嬢さんの出演契約を取り消す旨を通知し、販売の中止を要求することができます。業者が応じない場合には、販売の差し止めを求める仮処分命令の申し立ても検討できます。
お嬢さんの将来にかかわることですから、専門家に相談して急いで対応を講じるべきです。なお18歳未満の児童の場合だと、児童ポルノ禁止法の適用を受け、制作会社に刑事罰の責任を追及できる場合もあります。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2014年5月23日号