「お墓参りしても、そこには誰もいないのかと思うと複雑な気持ちになります」(48才・主婦)
「実家でも散骨の話題が出ます。結局、お墓に先祖がいないとなるとお墓もいらないのかと…」(52才・パート)
2006年、NHK紅白歌合戦で、秋川雅史(46才)が歌い、大ヒットした『千の風になって』。
これはアメリカで話題になった詩に作家の新井満さんが日本語訳をつけ、作曲し一大ブームとなったもの。ヒットの影響は多大で、墓参する人は減ったと語る関係者もいるほどだ。当の新井さんはこう話す。
「人は死んだら風になり、自在に移動できる。誰かがお墓参りに行けば、瞬時にそこに戻ってくる。お墓は死者と対話できる“ミーティングスポット”だと考えています。“狭くて暗いところに閉じ込められる”という死のイメージが、『千の風になって』のヒットで180度変わったのです」
確かに、歌のお陰で墓地は怖い場所という印象が一新したのは確かのようで、埋葬スタイルにも変化が表れている。
屋内型の納骨堂には、サラリーマンが会社帰りに立ち寄る姿も珍しくないという。利用者が専用のカードをかざすと、厨子という遺骨を納めたスペースが共用の墓石に移動する、自動搬送式も注目されている。
「都市部を中心に納骨堂は増え、夜9時まで参拝できるところも登場しています。ホテルのような内装で、従来の暗いイメージはありません。
墓地を公園のような明るい雰囲気にしたいと、従来の印象を一掃しようと工夫する霊園も増えています。
“絆”など、好きな文字を墓石に彫ることを提案したり、塔婆を立てることを禁じる霊園もあります。シックな緑や赤の墓石など形もさまざま。ガラス製でハートや球形のものもあるんですよ」(葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子さん)
「最近は、従来の縦長の墓石から横長の洋風型にシフトしている傾向があります。背が低い分、墓地の見通しがよくなり、切りだす石の量も少なくできることなど、コストの面でも人気です」(1級お墓ディレクターの寺田良平さん)
墓石の形や色も、現代風に進化しているようだ。
※女性セブン2014年6月5日号