主要ビールメーカーが、歴史ある「主力ブランド」の再興にしのぎを削っている。アサヒビール「スーパードライ」、キリン「一番搾り」、サントリー酒類「モルツ」、サッポロビール「ヱビス」。どれも長年固定ファンがついている各社の“看板ビール”だ。
ビール類の市場は「発泡酒」や「第3のビール」といった低価格の新ジャンルが人気を博したおかげで、ブランド数こそ増えたものの全体の出荷数量(課税ベース)は減り続けている。2013年は前年比1%減の4億3357万ケース(1ケースは大瓶20本換算)で、9年連続のマイナスだった。
こうしたデータを見ると、他社商品との販売競争はおろか、自社ブランド同士で需要の食い合いが起きていたことも否めない。そのため、各社ともロングセラーブランドの魅力を高め、原点回帰を図っている。
経済ジャーナリストの永井隆氏が補足する。
「ブランド復権の起爆剤となっているのは、高級ビールのカテゴリーです。サントリーが2003年に発売した『ザ・プレミアム・モルツ(プレモル)』が10年続けて過去最高の販売数量を叩き出したように、プレミアム市場は景気の後押しもあって伸び続けています。
そこで、アサヒがギフト専用だった『ドライプレミアム』を通年販売にしたり、キリンが新たに『一番搾りプレミアム』をギフト商品で投入したりするなど、看板ブランドの高級感をアップさせてシェアの奪い合いをしているのです」
そこで、各社の情報発信拠点となっているのが、期間限定のコンセプトショップである。
「スーパードライ」の年間販売数量が25年連続で1億ケースを超えた王者のアサヒは、氷点下に冷やしたビールが味わえる「アサヒスーパードライ エクストラコールドBAR」を全国9か所で展開。40万人の来場者数を見込んでいる。
その他、サントリーがプレモルの期間限定BARを六本木ヒルズにオープンさせたり、サッポロも「黒ラベル」のPR店を出店する計画があるという。
そして、アサヒに対抗するキリンは、発売25周年を迎える「一番搾り」が年間販売3300万ケースと、スーパードライに大きく水を開けられてはいるが、ブランド再興にかける情熱は並々ならぬものがある。
全国に4か所ある「一番搾りガーデン」では、一番搾りと二番搾り麦汁の飲み比べができるコーナーを設けたり、2012年より飲み方提案をしているフローズンビールをさらに訴求させたりと、これまで一番搾りを飲んだことがなかった人たちに向けたPRも盛んに行われている。