7月から解体工事が始まり、その後、イラク出身の建築家ザハ・ハディド氏によるデザインで建設が始まる予定となっている新国立競技場。独創的なデザインへの反発は小さくないが、カネの問題もある。
予算(1700億円)が予定より大幅に拡大したため、文科省が頼るのは東京都だ。
「文部科学省は東京五輪のために都が積み立てている4000億円の基金を当てにしているようです。だが、都としても五輪に向けて東京体育館の建て替えや東京湾エリアの開発があるので、今更『計算が狂った』といわれても、そう簡単に拠出できません」(都庁関係者)
そもそも日本スポーツ振興センター(JSC)はなぜ、ザハ氏の複雑極まりないデザインを採用したのか。
今回のコンペは2012年7月に募集要項を発表し、10月に第一次審査、11月に最優秀案を決定した。審査を担当したのは、建築家の安藤忠雄氏を審査委員長とする有識者10人だが、「グローバルな知見」を求める名目で委員となった英国のリチャード・ロジャース氏とノーマン・フォスター氏は一次、最終審査とも来日せず、都内で開かれた審査会も欠席するお粗末ぶりだったという。
それでもJSCは、「今後の意思決定の中立性が損なわれる」として、審査過程の公表を一切拒否している。建築エコノミストの森山高至氏は、「審査委員長の責任は重大」と断じる。
「建築家は医者と同じで専門分野が決まっています。安藤さんは高名だが、美術館が得意で競技場施設の知識は少ない。実は今回の審査員に競技施設の設計経験者はおらず、一同が『安藤さんが選ぶなら……』と追随した。ハッキリいって、ザハ案は素人が選考したようなものです」
※週刊ポスト2014年6月13日号